採算割れの新規事業の見極めはいつ? | 思考の法則トレーニング⑫

標識、岐路

いざ始めてはみたけれどなかなか成果が出ない・・・。
あなたもこのような経験があるのではないでしょうか?

このような時、諦めてやめてしまう時を見出すのはなかなか難しいもの。
新規事業の成否の見極めも、一歩誤ると大きな損失が出かねません。

このような場合、「成功者」はいつどのようにして見極めているのでしょうか。

このシリーズでは、最初に2択の質問を出し、その後に解答と解説をしていきます。
このシリーズを読んでいくうちに「他の人とは異なるアプローチ方法」が見付かるかもしれません。

採算割れの新規事業の見極めはいつ?

昨年の新事業アイデアコンテストで優勝した事業が2年目に入った。
新規事業は利用者も増え、製品の知名度も高まりつつある。
しかし一方で、売上も少なく、大赤字だ。試行錯誤が続いている。
果たして、この事業をどのようにすべきだろうか?
成否の見極めイメージ画

ここで質問です。
あなたはどちらを選ぶでしょうか。

質問

A せっかく頑張っているのだから続けさせるべきだ。
 利用者も徐々に増えてきたし、知名度も上がりつつある。
成果が出始めるまで見守るべき。
B あくまで結果で判断すべきだ。許容しうるリスクから、撤退ラインも拡大ラインも事前に決めておくべきだ。

サイバーエージェント式新規事業の撤退ライン

事業の撤退は一番難しい判断です。物事ははじめるより、止めるほうがよほど大変。
やり始めると「取引先とのしがらみ」「苦労して立ち上げた事業への愛着」「単純にもったいない」などいろんな思いが交錯して正しい判断ができなくなるものです。

そのため、判断が遅れ、取り返しのつかない痛手を負うケースも少なくありません

そのため、新規事業の撤退ラインは、はじめる前に決めておくことが鉄則です。

社員の新事業アイデアを積極的に活用し、事業拡大を図っている企業があります。インターネット広告大手のサイバーエージェントです。

サイバーエージェントでは、「ジギョツク」と呼ばれる新規事業をつくる提案制度は、内定者含めた全員が対象となっており、グランプリをとれば賞金100万円と事業責任者や小会社社長になることが約束されています。
書籍『成功する人は1年で成果を出してくる』画像『成功する人は1年で成果を出してくる! (単行本)』

15 回目のグランプリは内定者、16回目は入社2年目の社員だったそうです。

最初のころは、14件くらいしか出なかったアイデアが、現在では828件ものアイデアから選ぶといいます。
そうなってくれば、選ばれた提案のレベルもかなりのものでしょうね。

これによって、23歳の最年少役員も生まれています。
大学を卒業して間もない若い人材が新規事業を通して大きく成長できるしくみは、見習いたいものです。

ユニークなのは、新規事業に対して、サッカーチームのような昇格制度を設けていることです。

J3:新規事業、J2:先行投資事業、J1:中核事業です。

J2昇格基準は3〜6ヶ月の粗利が月500万、6カ月の赤字が3,000万以内ときいていますが、このようにレベルアップに明確な基準を設けていることは、参加者のゴールがリアルになっていいと思いますね。

そして、昇格だけでなく半年後に月間粗利500万円といった撤退基準も明確に設けています。

どんなに素晴らしいアイデアであっても、基準をクリアしなければいさぎよく撤退です。

何度も失敗しながらアイデアを軌道修正することは、新しい事業を運営する上で大変大事なことです。

しかし、いつまでもダラダラやらないためにも、次のステップに進む基準と、撤退する基準の両方を明確にするということは、新規事業制度の見本としたいところですね。

社長肝いりで始めたアメーバ事業も、赤字続きに

しかし、事業というものは、その製品やサービスの特性上、売上の上がるタイミングや収益化できるまでの期間はまちまちでしょう。

実際、前述のサイバーエージェントでも、藤田社長自ら始めたアメーバ事業は、最初の5年の間はまったく利益が出ず、累積赤字は60億円に達しながらも撤退しませんでした。

それは、社長が始めた事業だから、ということではなく、最初から利益貢献する「規模」と「時期」がほかの新規事業とは異なる基準を定めていたのだと思います。

実際、6年目には、いよいよアメーバ事業は黒字化して、24億もの利益をかせぐようになります。

会員数は2,359万人、営業利益59億円を稼ぐまでになっています。

書籍『起業家(藤田晋)』画像アメブロ会社社長が明かすアメブロ事業の苦闘と掴んだ成功談『起業家 / 藤田晋』

一般的に広告代理店は、手数料ビジネスのため、非常に薄利です。

特にインターネット広告代理店という類似カテゴリで上場企業の営業利益率を調べてみれば、2? 3%であることがわかりますが、サイバーエージェントは15%弱もの高収益体質であることがわかります。

これは、アメーバやFXといった高収益事業をしっかり長期戦略のもとで育て上げた結果です。

累計赤字1兆円に達したアマゾン

オンライン書店アマゾンが1997年に赤字のまま上場し、黒字に転換したのも、前述のアメーバと同じ6年目の2003年でした。

その間、なかなか収益化せず、累計赤字が1兆円に達しても、CEOのジェフ・ベソスは周囲のプレッシャーを意に介しませんでした。

周囲のリアル書店は巨額の赤字をたれながすアマゾンを冷ややかに見ていたわけですが、いったん黒字化した後も、怒濤のように売上を伸ばしており、オンライン小売業の中で絶対的な存在感を示しています。

2011年通期の業績は、売上高が前年比41%増の約480億ドル=3兆7,500億円程度です。

また、AmazonはKindleという電子書籍や、巨大なサーバインフラをいかしたクラウドサーバ(AWS)などに巨額の投資を行っており、先行投資による大幅な減益、赤字転落が心配されていましたが、Kindleはシェア率No.1の電子書籍事業に成長し、AWSも2018年第4四半期の純利益は63%増の30億2700万ドルと過去最高の業績を上げるなど、結果は好調です。

これらも、CEOのジェフ・ベソスの頭の中では、何年後に収益化という絵が描き上がっていたのだと思います。

アマゾンはオンラインとはいえ、基本的には他の書店とかわらず営業利益率は5%程度です。

サイバーエージェントのように、もっと収益性の高いビジネスを巨大なコンテンツデリバリーのプラットフォームに組み合わせることによって、長期的な利益構造を強化しようと考えているのでしょう。

一度、黒字になったからといって決して保守的にはならず、次々に新しいサービスを繰り出してくる才覚には、いつも驚かされますね。

事業の成否を見極めるタイミングは目的や業種でそれぞれ

事業の収益性は、それを何年で見るかは、それぞれです。
インフラ構築やエネルギー産業、生命保険業などでは、数年から数十年の推移の中で事業収益を見る必要があるでしょう。

装置産業や多大な先行投資の必要なビジネスでは、黒字になるまで時間がかかるものです。
一方、小売や飲食業などでは、週次、月次レベルで見ていかなければならないでしょう。

新規事業を始めるにあたって、どの期間で収益化すべきか、始める前に判断すべきタイミングと拡大・あるいは撤退の基準を決めておくべきです。

それは必ずしも売上や利益でないかもしれません。利用者数や取引量かもしれません。

それでも、目標のない新規事業は、目的の港がないのに、大海原に航海に出るようなものです。

かならず、どのタイミングでどの港に到着すべき船なのか、しっかり共通認識を持っておくべきです。

ビジネス構想力のヒント

  • 新規事業をはじめるときに、どのようなタイミングで、どのような基準をもって評価するかを事前に検討しておきましょう。
     決して、「投資がもったいない」という理由で撤退を先延ばしにしてはいけません
  • また、企業内で新規事業を生み出すしくみを持ちたいものです。
     お飾りとしての新規事業提案ではなく、発案者が責任者になれるようなシステムを構築しましょう

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