その企業「らしさ」はどこから来るか? | 思考の法則トレーニング➂

ネクタイ、ビジネスマン

先行きの見えにくいこの時代に、どうやったらビジネスで成功することができるでしょうか?
ビジネスゲームに勝つための思考の法則「5Aサイクル」

成功者に共通するビジネスプロセス「5Aサイクル」

  1. 顧客が抱える問題の「認知」(Awareness)
  2. 問題解決のための従来と異なる「アプローチ」(Approach)
  3. アイデアのスピーディな「実行」(Action)
  4. 実行結果の「分析」(Analysis)
  5. マーケットニーズに合わせた柔軟な「適応」(Adjustment)

成功者が自然とビジネスで使っている5Aサイクルですが、5Aサイクルだけでは成功できるとは限らず、決して欠かせない要素がもうひとつあります。

「5Aサイクル」で成功するために必要不可欠なもの | 成功者の法則

このシリーズでは、最初に2択の質問を出し、その後に解答と解説をしていきます。
このシリーズを読んでいくうちに、ビジネスに必要とされる「新たな視点」が見付かるかもしれません。

質問03 その企業「らしさ」はどこから来るか?

あなたはハンバーガーチェーンのオーナー社長。
この十年、店舗数は順調に増えたが、1店あたりの売上は連続して減少。
役員の中には、「ハンバーガーはもうあきられたから、カレーやチャーハンを出してみては?」を話も出ているほど。
たしかに、これまで興味がなかった人が来店してくれれば、新たなビジネスチャンスが得られそうだが・・・。

ハンバーガー画像

ここで質問です。
あなたはどちらを選ぶでしょうか。

質問

A 店舗が多ければ、メニューを増やすことで、顧客の選択肢は増え、売上は上がるはず。
  店舗の数を強みに勝負すべき。
B むやみにメニューを増やすのには反対だ。ハンバーガー屋なのか何屋なのか、わからなくなる。

メニューを増やせば、人は増えるか?

「品揃えが増えれば、これまでハンバーガーに興味のなかった層も来てくれるかもしれない」と思う気持ちもよく分かります。

確かに、店舗数が多ければ、新しいカテゴリでヒット商品が生み出せれば集客力、収益力が回復するかもしれない…そう考えるのは、間違いではありません。

ただし、事業の「本筋」を忘れると、短期的な収益貢献で終わるだけでなく、ブランドイメージがあやふやになり、長期的にはマイナス効果に終わることもあり得るのです。

実は日本マクドナルドも、同じよう状況に陥ったことがあるのです。
1990年頃、マクドナルドは出店ラッシュでその数は1000店を超えていました。

しかし、店舗数の伸びとは裏腹に、収益は急速に悪化していたのです。
社内ではその原因を、店が増えすぎたことによる「共食い状態」であると考えていました。

ハンバーガーの需要はすでに頭打ちだから、その限られた需要を多くの店舗で取り合う「共食い」だと。
だから、もはやハンバーガーにこだわらず、店舗数の多さを活かして、カレーやチャーハンなどメニューを増やせば、収益力は回復するのではないかという話が持ち上がったのです。

そして実際に、カレーやチャーハンを提供したといいます。
今となってはマクドナルドでカレーが販売されているのは、イメージしづらいですね・・・。
ともかく、マクドナルドは、7年連続で既存店売上高が減少するという、崖っぷちに立っていました。

ところが、アップルコンピュータからヘッドハンティングされてマクドナルドへやってきた異端の経営者は、まったく別の見方をしました。

むやみに多角化するのではなく、基本に立ち戻ろうと考えました。

「ハンバーガー屋はハンバーガーをおいしく、高い品質のサービスで提供することがコアビジネス」として、自分たちの原点にたちもどることにしたのです。

改めて飲食業の基本となるQSC(おいしさ、サービス、清潔)運動を促進し、不採算店を徹底的に閉鎖して優良店に絞った上で、店舗オペレータの教育や評価制度といった「質の改革」に乗り出した結果、その後8年連続の増収増益となったのです。

「マック(Mac)からマック(McDonald)へ転身」と揶揄された社長の原田泳幸氏は、一転、日本のカリスマ経営者の一人として知られるようになりました。

企業の「らしさ」は何か?

企業にはそのサービスを印象づけるブランディングが必要です。ブランディングは、顧客がその企業やサービスに感じるひとことでいえば「らしさ」です。

「らしさ」を壊して、むやみに多角化したり、ヒト、モノ、カネといった企業の持つ貴重なリソースを分散させたりすることは避けるべきです。

コアビジネスの付加価値を高める努力を怠ってリソースを分散させると、すべてがどっちつかずになって崩壊するのが関の山です。

また、「らしさ」は企業文化でもあります。
技術や業務プロセスは容易に真似することができても、企業文化や組織の雰囲気というのは人と人とのコミュニケーションに成り立っているので、容易に模倣はできません。

企業文化が、その企業のコア・コンピタンスになっている企業は強いのです。

たとえばリッツ・カールトンの上質なおもてなし、サウスウェスト航空の乗務員による機内エンターテイメント、ディズニーリゾートの提供する夢の国は、すべて現場でサービスを提供する一人一人の「顧客に楽しんでもらおう」という強いマインドセットがもたらすものです。

マクドナルドも、厳しい時代を乗り切るために、店舗スタッフの教育や評価制度などの「人」の問題に取り組んだのは、まさに「マクドナルドら
しさ」は、現場のサービスにある、といった信念だったのでしょう。

「らしさ」を保てている企業は、強く、そして、長期に渡って繁栄できます。誰もやっていないことをやろう、というイノベーションに根ざした企業文化は特に強いです。

マクドナルドの変遷に興味のある方はこちら。
https://www.amazon.co.jp/dp/4492502610『マクドナルド 失敗の本質: 賞味期限切れのビジネスモデル』

たとえばアップルの「らしさ」は、稀代のクリエイター魂を持つ創業者スティーブ・ジョブズが作ったものです。
アップルはそもそもコンピューターメーカーでしたが、今では、半分以上の売上がiPhone というスマホメーカーです。

しかし、主要製品のカテゴリが変わろうとも、私たちは、「この製品はいかにもアップルらしい」と感じることができます。

それは、携帯電話やパソコンといった機械に機能だけでなく、ジョブズが求めたデザイン上の「セクシーさ」や、「驚くべき操作性やインターフェイス」があるからでしょう。

企業文化のコアパーソン亡き後、アップルが「アップルらしさ」を保っていけるかどうかが、注目されます。

ソフトバンクとマクドナルドとアップルの奇妙な関係

話は脱線しますが、ソフトバンクの孫正義氏は、学生時代から日本マクドナルドの創業者である藤田田社長を尊敬していたそうです。

そして孫正義氏が高校生の時に「どうしても会いたい」と、いきなり藤田社長をたずねました。そのときに藤田社長からアドバイスされたのが、次のようなものだったといいます。
「これからビジネスをやるならコンピュータを勉強しろ」

孫正義氏はそのアドバイスを胸にその後、ソフトバンクを創業。
通信事業に乗り出し、iPhone で大ブレイクしました。

そして、今、当のアップル出身で元コンピュータ技師でもある原田社長が新しいマクドナルドの価値を作り出し、さらなる飛躍を続けているというのは、なんとも運命めいたものを感じます。

話を戻しましょう。企業には「らしさ」が不可欠です。
でも、同じスタイルにこだわりすぎても生きていけません

環境は常に変化しています。
市場環境、顧客のニーズに合わせて、自らを変えていく適応力も時として必要です。
アップルがコンピューターメーカーから、音楽配信サービスに転換し、現在は携帯電話メーカーであるのと同様に、です。

フィルム事業を捨てることのできた富士フイルム

「らしさ」をキープしつつ、環境に適応して大変身した老舗企業はほかにもあります。

富士フイルムは、カメラや映像がデジタル化され、フィルムが不要になるメガトレンドにおいて、経営陣の機転によって主力事業「フィルム」をうまく方向転換させることができました。

今は、社名に「フイルム」と入っているにもかかわらず、フィルム関連事業の割合は5%まで低下しているといいます。

その代わりに、医療や化粧品、健康食品といったこれまでにない分野に多角化しているのです。

それでは、富士フイルムは「らしさ」を失ったのでしょうか? 実は、そうではありませんでした。

たとえば、化粧品。一見すると、写真フィルムと化粧品に共通点は見いだせないように思えます。

でも、これが意外にも密接なつながりがあったのです。

例えば、あまり知られていませんが、写真フイルムの主成分はコラーゲンです。

あの、肌には不可欠な成分ですね。富士フイルムは、日本でも有数のコラーゲンを知り尽くした企業というわけです。

そして、写真の「色あせ」を防ぐための技術は、肌の老化防止に重要な抗酸化作用につながります。

そして、薄いフィルムの階層に安定的にこうした成分を吹き付ける超微粒子技術(ナノテクノロジー)。この技術は、美容液などの有効成分を肌に浸透させるために、超微粒子にする部分で使われているのです。

つまり、分野が異なるだけで、写真フィルムや現像に必要な技術をそのまま活かせるのが、化粧品や医療の分野だったわけです。

「らしさ」をなくして、なんでもかんでも多角化したわけではなく、しっかり「らしさ」の根源にあるコア技術を応用できる分野を探して、拡大していったのですね。

『新たなる覇者の条件 なぜ日本企業にオープンイノベーションが必要なのか? 』『新たなる覇者の条件 なぜ日本企業にオープンイノベーションが必要なのか?』

一方で、米国の最大手フイルムメーカーだったコダックは破綻。
過去の繁栄、フィルム時代の甘い記憶が判断を鈍らせたのかもしれません。富士フイルムとコダックの行く末は、日米のフィルム大手の対称的な趨勢を印象づけました。

企業の「変態力」が、ものすごい強みに

「変態」という言葉があります。「変態」とは、動物の生育過程で幼年期と成体の間で大きく形が異なることを指します。土の中で幼虫が育ち、やがて成虫になると羽が生えて、大空に飛び立つ…そんなシーンを想像してみてください。

環境に合わせて生きるために、形、生活様式、場所が最適化されるのです。
これは、企業の成長過程でも同じことです。

コアとなるスタイル、スキル、強みを残したまま、どのように環境変化にあわせて、うまく「変態できるか」、これが一番重要な生き残りの技術です。

そのためには、まず、コア・コンピタンスが何であるかを定義しなければいけません。どんなに変わっても、変わらないものは何かを明確にしなければいけません。

コア・コンピタンス (Core competence)とは、ある企業の活動分野において「競合他社を圧倒的に上まわるレベルの能力」「競合他社に真似できない核となる能力」の事を指す。
コア・コンピタンスは次の3つの条件を満たす自社能力のことである。

  • 顧客に何らかの利益をもたらす自社能力
  • 競合相手に真似されにくい自社能力
  • 複数の商品・市場に推進できる自社能力

具体例として自動車産業が取り上げられ、ホンダにおけるエンジン技術(芝刈り機や除雪機からF1を含む自動車までコア技術を幅広く展開)や、フォードによる買収前のボルボにおける安全技術などが挙げられる。
引用:https://ja.wikipedia.org/?curid=281014

それが特別な技術なのか、マーケティング力なのか、企業文化なのか・・・。

まずは、絶対にブレない中心核を定めましょう。その後で、その時々でもっとも最適な判断をしていけばいいのです。

コア・コンピタンスの価値を十分高める努力を怠って、リソースを分散させるのは自ら窮地に入っていくようなものです。

ビジネス構想力のヒント

ビジネス構想力のヒント

あなたの会社の「らしさ」を一言で説明してみましょう

  • その「らしさ」は、十分、ライバルに対して優位性がありますか?
  • 顧客にとっての価値あるものですか?

コアとなるスタイルやスキルは「強み」です。
そして「強み」を失わず、その時々の環境に適応することが、生き残る唯一の術なのです。

5Aサイクルに役立つビジネスコンセプト「競争優位性」

5Aサイクルに役立つビジネスコンセプト「競争優位性」図