素晴らしいアイデアと綿密な戦略が成功の近道か? | 思考の法則トレーニング④

未来志向の戦略

誰でも、できるだけ苦労せず、時間を掛けずに成功を掴みたいもの。
どうすれば早く、成功を掴むことができるのでしょうか?

このシリーズでは、最初に2択の質問を出し、その後に解答と解説をしていきます。

素晴らしいアイデアと綿密な戦略が成功の近道か?

あなたは、貯金をはたいて小さな会社をやろうとしている起業家だ。
しかし、これといって確信できるビジネスアイデアがあるわけではない。同僚や先輩からは、もっとしっかりしたアイデアを思いつくまで待ったほうがよい、ともアドバイスされているのだが…。

アイデアを思い浮かべる図

ここで質問です。
あなたはどちらを選ぶでしょうか?

質問

A もちろん、具体的な製品や綿密な計画がなければ始まらない。
 しっかり、事業内容や戦略、戦術を決めてから活動すべきだ。
B どんなに綿密な計画を立てたところで、やってみなければわからない。
 まずは、活動拠点となる会社を作るほうが先決だ。事業は後からついてくる。

「未来志向の企業」の条件

スタンフォード大学教授のジェームズ・C・コリンズらは、長年、超一流企業であり続けた代表的な企業(3M、AMEX、ボーイング、GE、ジョンソン&ジョンソンなど18社)を選び出し、visionary company(未来志向の企業)と名付け、創業から長年に渡る軌跡を同業他社と比較調査しました。

その結果、意外な事実が判明しました。
それは、一般的に考えられている「一流企業として存続する条件」は、彼らが選んだ優れた企業には、当てはまらなかったということです。

通常は、「すばらしいアイデアがあり、それを実現するために会社を設立したのだろう」と私たちは思い込んでいます。

しかし、多くの優れたビジョナリー・カンパニーの設立時の様子を調べると「とりあえず会社を作った、そして、アイデアを探した」
というのが実態だったのです。

特に、設立初期では、何でも屋のように、あらゆる可能性を試した企業が多いのです。

たとえば、ヒューレット・パッカードは、創業時期には◯◯から◯◯まで、◯◯ならなんでもやってみました。最初のヒットは電卓でしたが、現在の稼ぎ頭はプリンターを含めたITT機器です。

ソニーだって、現在のオーディオ・ビジュアルという事業ドメインが見えてきたのは設立から5年ほど経った後です。

最初の発明は電気釜で、そのあとも失敗の連続でした。
どうしても電気釜を成功させる、というこだわりがあったら、今のソニーは存在していないかもしれません。

とにかく、会社を軌道に載せようとする試行錯誤の先に、今のオーディオ・ビジュアルでの地位があるわけです。

世界で1日に消費される清涼飲料水数は約50億杯だそうですが、そのうち18億杯がコカ・コーラだそうです。そのコカ・コーラは、薬局の店員が販売用のシロップをソーダで割っておいしそうに飲んでいたのがヒントになり、スタートしました。

ジーンズの代名詞ともいえるリーバイスは、もともと帆船の布を売っていた男が、同じキャンバス地でズボンを作ればゴールドラッシュで集まってきた金鉱堀りたちに丈夫な作業着を提供できる、と考えてスタートしました。

つまり、数々の世界有数のビジネスは、「たまたま」から生まれてきたのです。


書籍『ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則』画像『ビジョナリー・カンパニー 2 – 飛躍の法則 / ジム・コリンズ 』

優れた企業は1つのアイデアに固執するのではなく、むしろ会社を存続させることに固執した、と言い換えることもできるでしょう。

これが、世紀を越えて生き残ってきた企業の唯一のシンプルなサバイバル技術なのです。
そういった意味においては、会社を作った後でビジネスを探しにいっても一向に問題ないのです。

なぜなら、綿密な計画を練っても、そのとおりになる確率のほうが低いのが現実の世界。

失敗しても次々に代案(プランB)に乗り換えながら「なんとしても会社を軌道にのせるまで諦めない」という姿勢が一番、大事なのだと思います。

海から陸にあがった魚は、長期戦略を持っていたか?

ところで、企業の進化は、ダーウィンの記した「種の保存」の法則に似ているといわれます。

たしかに海から陸にあがってきた最初の魚に、長期戦略や進化するアイデアはありませんでした。

ただひたすら環境に合わせて常に最適化してきた結果、陸に上がり、大空に羽ばたいたのです。

そこでは戦略の代わりに、「実験」「試行錯誤」「適応」が繰り返されます

実際に進化していく生き物たちは、気の遠くなるような時間をかけてそれらを行い、しだいに体が新しい環境で生きるために「変態」していくわけです。

ビジョナリー・カンパニーを調べたジェームズ・C・コリンズらも「未来志向の企業になりたいのなら、綿密な戦略よりもダーウィンの種の保存を学ぶほうがよほど役に立つ」と言っているくらいですから。

最高のアイデア、綿密な計画がかならずしも成功への近道ではありません。

むしろ、実験と修正を繰り返した結果、良いものを残していく、という「種の保存」をベースに考えることで、あなたのビジネスを短時間でより研ぎ澄ませていくことができるでしょう。

ポイントは計画の緻密性ではなく、どれだけ短時間に、測定可能なビジネス実験ができるかです。
失敗であったとしても、それを許容できる範囲内でトライ&エラーを繰り返すことができるか、ということが重要なのです。

特に、この問題のように限られた軍資金でスタートする場合は、すべてを1箇所に掛けるのは危険すぎます。

資産運用の金言で、「1つのカゴにすべての卵を入れてはいけない」というのがあります。

これはポートフォリオ理論と言われるもので、要するに資産を分散することによってリスクを低減することができるというものです。

ビジネスも同じ。一回目でスマッシュヒットを飛ばすことは難しいので、かならず軌道修正可能な余力を残して、トライアルすべきです。

また、会社が軌道にのったからといって、実験や試行錯誤を止めてはいけません。

軌道に乗った事業から収益が得られるうちに、次なる実験に着手すべきです。
国税庁( 2005年調べ) によれば日本の全法人数約255万社のうち、設立5年で約85%の企業が消え、十年以上存続できる企業はほんの6.3%です。

安定収益が確保できている間に、未来のために新しいビジネスで試行錯誤ができる企業が、この激しい生存競争の中で生き残ることができるわけです。

完全にオリジナルなアイデアなど存在しないい

ユニークなアイデアはたしかに素晴らしいもの。
しかし、アイデアの魅力に過剰に期待してもいけません。

「この世にまだ存在していない素晴らしいアイデアに違いない!」と思っても、同じようなことを考えている人が千人くらいはいると思って間違いありません。

だから、実行に移さないと自分の考えていたものが、どんどん世の中に出てきて、先を越されてしまいます。

筆者も仕事柄、年中、事業アイデアを考えているわけですが、考えていた同じアイデアが他社で製品になることが日常茶飯事です。
アイデアのオリジナリテは私たちが考えているほど、希少性はなく、実は、実現のアプローチ方法のほうに希少性があるのです。

アイデアの実施計画に多大な時間を費やすのではなく、少しでも他の企業より早く実験できるようにスケジューリングすることが大事です。

ビジネス構想力のヒント

  • 戦略よりもトライ&エラーが大切
  • ビジネス成功の鍵はダーウィン「種の保存」の中にある

アイデアや事業戦略なしに安易に起業などすべきではない、と常識的な人はアドバイスするかもしれません。
しかしも、やってみなければ、成功もないし、失敗もありませんよ。

未来志向の企業は戦略よりも種の保存

種の保存の法則で長く反映する企業図

参考図書