ありえない効率化は実現できる? | 思考の法則トレーニング⑦

Amazon boy

かつて誰もが想像もしなかった効率化や利益率の向上は、どのようにしたら得られたのでしょうか。

このシリーズでは、最初に2択の質問を出し、その後に解答と解説をしていきます。

ありえない効率化は実現できる?

あなたは、新しくできた物流センターの責任者だ。
そしてロボットの棚に必要とする商品があれば、それを必要としている作業員のところに行けと指示を出します。
東京ドームを上回る巨大な倉庫には、膨大な種類の商品が所狭しと、無造作に置かれている。
しかし、1つずつの注文は少量で、巨大な倉庫の中から該当する商品をピックアップするのは大変な作業だ。
なんとか画期的に作業を効率化する手立てはないだろうか?
非効率なイメージ

ここで質問です。
あなたはどちらを選ぶでしょうか。

質問

A まずは、商品を整理することだ。カテゴリ別、商品名別などで整然と並べ、探す時間を短くすること
B アイテム数が膨大だと、ピックアップ自体がロスにつながる。なんとか作業員が動かすに済む方法は考えられないか?

巨大倉庫の主役はロボット?

オンライン小売大手のAmazonは、配送センターで、必要な商品を載せた棚が自動で梱包係のもとに走ってくるロボットを配置し人手を大幅に軽減しています。

通常は、倉庫での商品ピックアップから梱包、配送といった一連の作業をスピードアップするなら、商品をアルファベット順やカテゴリ順にきちんと整理し、注文表を見ながら、ロスのないようにピックアップしていくことをイメージするはずです。

でも、この自動システムは違います。
作業員は一歩も動きません。動くのは棚自体です。

自走式の棚ロボットには、商品は入荷された順に「ランダムに」置かれています。

アルファベット順でも商品コード順にでもありません。倉庫内で並べ直す時間すら、もったいないからです。
そして、コンピュータは、どのロボットの棚に、どの商品が置かれているかをすべて管理しています。

そしてロボットの棚に必要とする商品があれば、それを必要としている作業員のところに行け、と指示を出します。

作業員の元に到着したら、天井からのレーザーライトで、お目当ての商品が棚のどこにあるのかを指し示します。

作業員は、伝票に連動した商品を取り上げ、バーコードを読み取り、カゴに入れます。

役目を終えた棚ロボットは自分の定位置へと、そそくさと戻ります。
ちょうど、自走式掃除ロボット、ルンバをイメージするといいでしょう。

この倉庫ロボット「Amazon Robotics」は、既に日本の川崎や茨木でも活躍していますが、Amazonは荷物の仕分けなど更なる自動化を進めつつあります。

ECショップにとっての脅威

ECサイトは星の数ほど多く存在し、かっこいいデザインだけで勝てるほど単純なものではなくなってしまいました。

顧客の注文に対して低価格な商品を、正確で、スピーディに配送しなければ、生き残れないのです。

例えば、巨大な倉庫を持つAmazonの強みに「ロングテール」というものがあります。

ロングテールは、少量しか売れないものもアイテム数が大量にあればビジネスになるというオンラインショッピングならではの強みを表した言葉です。

ロングテール(the long tail)とは、インターネットを用いた物品販売の手法、または概念の1つであり、販売機会の少ない商品でもアイテム数を幅広く取り揃えること、または対象となる顧客の総数を増やすことで、総体としての売上げを大きくするものである。
引用:https://ja.wikipedia.org/?curid=338523

アイテムごとの売上曲線が恐竜のしっぽに似ていることから名付けられました。

しかし、その強みもAmazonのような巨大な倉庫を郊外に持ち、注文に迅速に対応できるしくみができているから成立します。
大量の注文が一気に増えると、遅配、誤配、品切れなどすぐに品質低下を招きます。

これを人為的な努力だけでカバーするのは難しいものです。Amazonンの最初の配送センターは1万平米に満たない倉庫でしたが、すぐに250倍の大きさにふくれあがっており、Amazon自身も自社ビジネスのリスク要因の1つに、商品発送センターおよび倉庫での作業効率化を挙げていたほどでした。

逆転的発想を実現するテクノロジー

物事の効率化をはかる、という場合にかならずしも「より速く、よりミスを少なく、より丁寧に」といったカイゼンのアプローチだけではうまくブレイクスルーしないことがあります。

クリスマスシーズンに普段の数十倍の注文が一度にきても、発送が遅延しないしくみを作るのであれば、なおさらです。

以前の段階でもAmazonは、コンピュータに指示されたアイテムを拾い集めていくだけで発送ができるほど、すでに自動化は進めてきました。

しかし、さらなるスケールアップに対応するという経営課題を、棚ロボットがひしめく自動化倉庫の構築によって乗り切ろうとしています。
これは、自動化 + 逆転的発想のアプローチといえるでしょう。

オンラインで注文しようがしまいが、リアルなアイテムを販売するビジネスであれば、物流のしくみづくりは生命線になるはずです。
多品種少量生産で、小口の注文に迅速に対応するのであればなおさらです。

たとえば、以前の小売業は、たくさん仕入れて、売れ残ったらバーゲンセールで処分する、という流れが通例でした。

大量生産するため「どれだけ正確に需要を予測できるか?」が鍵だったわけです。

しかし、現在は、いかに小ロットでモノを作り、売れ残りを減らすかが鍵です。

「もう少し売れるかもしれない」という機会損失よりも「売れない在庫」のリスクを減らしたほうが、結果的には利益率がよいということなのでしょう。

そのため、成功しているファストファッションは、製造から小売までを垂直統合したビジネスシステムを構築しています

ファッションとコンピューター・ネットワーク

スペインのファストファッションブランド、ZARA(ザラ)はその独自のサプライチェーンマネジメントで知られています。

世界中の店で、「この店ではこんな服が売れる」というデザイン画を本部に送れば、◯日後には、到着します。

女性は人気アイテムに群がる傾向がある一方で、他人と同じものは着たくないというあまのじゃくな傾向がありますから、大量に作ると余剰在庫になってしまいます。

だから、ZARAでは売れる分だけを作り、売り切れたら、それでおしまいです。

2度と同じ服を見つけることはできないので、それが購買者にとっては希少性となり、購入意欲をそそります。

差別化は、いかに売れそうなものを売れそうな数だけ、いかに素早く作って届けるか、ということ。

華やかなファッションの世界にあって、ザラはそうしたビジネスニーズを緻密に組み立てられた巨大なコンピューター・ネットワークのシステム上で運営しているのです。

こうしたシステムにより、今売れるものだけをすぐ作る、という逆転のアプローチを可能にしています。

書籍『すごい物流戦略』画像『アマゾン、ニトリ、ZARA…… すごい物流戦略 (PHPビジネス新書)』

余計な在庫を持たないことで、企業の収益力は飛躍的に高まります

平均的なアパレルメーカーは、正価で販売した場合に比べて実際の売上は60%にとどまりますが、ZARAでは85%に達するといいます。

最新の流行を採り入れながら低価格に抑えた衣料品を、短いサイクルで世界的に大量生産・販売するファッションブランドは「ファストファッション」と呼ばれています。

ZARAは、H&M、GAP、ユニクロなどとともにファストファッション業界のトップ10の1つになっています。

AmazonやZARAなど、多品種、少量生産を実現する小売企業にとってロジスティクスは生命線です。

両者とも、マッハのスピードで発注から納品までを効率化するしくみが、コア・コンピタンスの1つとなっています。

そして、リードタイムの極限まで短くするイノベーションに、「逆転の発想」と「コンピューターテクノロジー」がうまく組み合わされています。

ビジネス構想力のヒント

あなたの考える課題に対して、自動化によってイノベーションの起こせる領域がないか考えてみましょう。
自動化を実現するしくみに、大きな初期投資が必要だとしても、リードタイムを極小化するシステムは、それを補って余りある収益をもたらしてくれる可能性が大きいのです。

ビジネスに役立つキーワード「パレートの法則とロングテール」

パレートの法則とロングテール図