マニュアルどおりなら大丈夫? | 思考の法則トレーニング⑨

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ルールがあるからこそ、社会は混乱なく、スムーズにまわっていきます。
どの企業も何らかの形で「マニュアル」を整備し業務の運用に役立てているかと思います。

マニュアル活用で重要なのはその「さじ加減」ですね。

このシリーズでは、最初に2択の質問を出し、その後に解答と解説をしていきます。
このシリーズを読んでいくうちに、ビジネスに必要とされる「新たな視点」が見付かるかもしれません。

マニュアルどおりなら大丈夫?

あなたは、ファミリーレストランの店長。接客マニュアルでは「大人にお子様ランチを売ってはいけない」となっている。
しかし、若い夫婦がやってきて、お子様ランチを3つオーダー。
禁じられている行為をおこなってもよいだろうか?
若いカップル画

ここで質問です。
あなたはどちらを選ぶでしょうか。

質問

Aマニュアルは、現場スタッフがいちいち判断しなくてよいようにルール化したもの。
 顧客にきちんとルールを説明して納得してもらえばよい。
Bなぜ、大人なのにお子様ランチが必要なのか?しかも3つ?
 何か特別な理由があるのかもしれない。可能な限り、お客さんの要望に答えてあげるべきだ。

マニュアル主義の盲点

最近はどの企業でもサービスでも、マニュアルが充実しています。
業務マニュアル、運営マニュアル、手続きマニュアル・・・。

もし、あなたが新しい会社に入れば「読んでおいて」、と山のようなマニュアルが渡されることでしょう。
社内サーバーにはまともに管理されていない放置状態のマニュアルが散財している状況です。

いったい、マニュアルは何のために、作ったものなのでしょうか?

マニュアル本来の目的は、「ミス」を減らすことです。

経験の少ない人でも的確な判断、行動ができるように「指針」や「手続き方法」について書いてあるものです。

マニュアルがあれば、短時間で、業務に慣れることができ、不用意なミスによって顧客に不快感をもたらしたり、会社に損失を与えたりせずに済むというメリットがあります。

それがマニュアル本来の価値です。

さて、問題のお子様ランチですが、マニュアルには「大人には販売しないように…」ということが記載されているようです。
しかし、それによって「どんなミス」を防ぐことができるのでしょうか?

何のためにその規則が設定されているのでしょうか?
目的が明確でないマニュアルは指針にも、チェックリストにもなりえません。

どのようなサービスでも顧客満足度を上げる、というのは最優先課題のはず。
マニュアルどおりに対応した結果、顧客が嫌な気分になるとしたら、そんなものはマニュアルとは呼べないでしょう。

ディズニーランドの感動秘話

このエピソードは、実際にディズニーランドで起こった出来事です。

ディズニーランドのそのお店では「お子様ランチは9歳以下」とマニュアルにはしっかり記載があったのですが、レストランの青年は子供連れではない若い夫婦からお子様ランチの注文を3人前受けたのです。

彼は、困りました。その上でその夫婦に聞いたのです。

「どなたがお子様ランチを食べられるのですか?」
すると、若い夫婦が「死んでしまった娘の命日に、3人でお子様ランチを食べるまねごとをしたかったんです。
娘は亡くなる前、ディズニーランドにきて、お子様ランチを食べるのを夢にしていたので…」というのを聞き、絶句したそうです。

そして、彼は、マニュアルに反して注文を受けただけでなく、「子供さんはこちらに」と子供用の椅子まで用意をして、彼らを「家族連れ」としてもてなしました。
若い夫婦は、亡くなった娘に思いを馳せながら、3人分のお子様セットを食べて帰ったそうです。

その後、ディズニーランドには、この夫婦からお礼の手紙が届きました。

「お子様ランチを食べながら涙が止まりませんでした。まるで娘が生きているように家族の団らんを味わいました。
こんな娘との家族団らんの体験を東京ディズニーランドでさせていただくとは、夢にも思いませんでした。
これから、二人で涙をふいて生きていきます。
また、二周忌、三周忌に娘を連れてディズニーランドに必ず行きます。
そして、私たちは話し合いました。
今度はこの子の妹か弟かを連れてきっと遊びに行きます。本当にありがとうございました」

この感動秘話は、ネットや口コミで広がり、ディズニーランドの逸話の1つとなってかけめぐりました。

そして、このようなエピソードは、高いホスピタリティにあふれた夢の国に対して屈強なブランド価値を作り上げることになります。

書籍『ディズニー7つの法則』『ディズニー7つの法則』単行本

上質の顧客サービスを支えるリッツ・カールトンのクレド

本当に素晴らしい顧客サービスはマニュアルだけから生まれません。

むしろ、マニュアルにはのっていない、スタッフそれぞれの考えるカスタマー対応にこそ、人を感動させ、ファンにさせる部分がつまっているといえるのです。

接客マニュアルがもっとも進んでいるマクドナルドでさえ「マニュアルだけ盗んでも同じことはできない。
サービスを提供するのは人だから(原田社長談)」と言っているくらいです。

顧客満足は、人の教育、理念の共有なしには達成できないと考えて間違いないでしょう。

顧客満足度を重視するサービス業ではマニュアルの代わりにクレドをかかげている企業もあります。

クレドとは、「信条」といったものです。
マニュアルが「作業」や「操作」を標準化しているのに対して「行動理念」の指針を提示しているものです。

接客クオリティで知られる高級ホテル、リッツ・カールトンのクレドカードには、シンプルに次のように書いてあります。

「リッツ・カールトンはお客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供することをもっとも大切な使命とこころえています。
私たちは、お客様に心あたたまる、くつろいだそして洗練された雰囲気を常にお楽しみいただくために最高のパーソナル・サービスと施設を提供することをお約束します。
リッツ・カールトンでお客様が経験されるもの、それは感覚を満たすここちよさ、満ち足りた幸福感そしてお客様が言葉にされない願望やニーズをも先読みしておこたえするサービスの心です」

感動を生むために、現場にエンパワーメントする

「なあんだ、当たり前のことばかりじゃないか」と感じた人もいるのではないでしょうか?

「お客様への心のこもったおもてなし」は人ぞれぞれで考え方は違うでしょうし、クレドに詳細はあえて定義していません。
ではいったい、どのようにこのクレドを活用しているのでしょうか?

クレドをベースにした具体的な行動のエピソードとして、元リッツ・カールトン大阪の営業責任者だった林田正光氏は、著書の中で次のようなエピソードを披露しています。

フロリダのリッツ・カールトンで、スタッフの一人が浜辺のビーチチェアを片付けていると、一人の男性が「恋人にプロポーズをするから、1つ残しておいてくれないか」と頼まれました。

スタッフは、「申し訳ありません、時間ですので」とは答えず、「もちろん」と答えました。

リッツ・カールトンでは、顧客に対してNOは言いません。それどころか、そのスタッフは、自らタキシードに着替え、テーブルに花とシャンパンを用意し、プロポーズの時に男性の膝が汚れ無いように、砂浜にタオルを敷いて、プロポーズを待ちました。

そのカップルが、どれほど感動したかは想像に難くないでしょう。

リッツ・カールトンでは、このような粋な計らいや顧客とのトラブルを収拾するために、最高2千ドルの特別決裁権が設けられているといいます。

つまり、クレドで規定するのは、行動理念だけで、それを実現するのはスタッフであるということです。
クレドの実行に際しては、スタッフにエンパワーメントしているわけです。

素晴らしい理念も、具体化し、実現するのは、常に顧客と直接触れ合う現場のスタッフであるという考えがベースにあります。

顧客へのサービス提供するスタッフ自身の考える「最高のおもてなし」を行うことが重要です。

だから行動や手続きを規定するよりも、従業員の才能やホスピタリティスキルを高める教育が優先されるのです。

顧客サービスは短期的にはコストだが、長期的には投資

米国で顧客満足度ナンバーワンのオンラインショップといえば、ザッポス(Zappos)です。

ザッポスは靴のオンラインショップですが、オンライン特有の機械的で、冷たい顧客対応とは裏腹の、フレンドリーで、採算度外視の顧客志向が、高く評価されています。

通常のオンラインショップにとってコンタクトセンターとはコストであり、アウトソーシングする対象となる部門ですが、ザッポスでは、この部門こそが花形で、サービスの心臓部と考えています。

そんなザッポスでは、問い合わせに関するマニュアルは存在しません。
オペレータにリクエストされているルールは「サービスを通してWOWを届けよ」だけです。

「WOW」は、感動したり、驚いたりするときに発する言葉です。
つまり、自分たちのサービスを通してどれだけ感動や驚きを与えられるか、を唯一のルールにしているということです。

ザッポスに効率化のためのマニュアルはありません。

だから、何時間顧客と電話で相談しようが、自社サービス以外の情報提供をやろうが構わないというスタイルです。

CEOのトニー・シェイは「短期に見ればコストでも、長期に見れば投資になる」として、ケタ違いに高い顧客サービス品質は自社のコア・バリューだと自負しています。

マニュアルはオペレーションの効率化には効果がありますが、マニュアルでがちがちに固めた組織は、かならずしも強くありません。

長期的に考えれば、常に顧客満足度の向上が、最終的な利益につながるという考え方を全員が共有し「マニュアルに従い、自分では考えない」のではなく、

「自分のやりかたで最高のサービス」を提供することが、マニュアルを超えた上質の、ほかでは真似のできない上質なサービスを形作るのではないでしょうか。

ビジネス構想力のヒント

例外を出さないマニュアル運用から高いサービス提供は望めません
まずは、サービス品質、顧客満足を高めるための行動規範を定めましょう。

その上でスタッフの採用や教育に力を注ぎ、企業文化を作ることができれば、それは真似できない、その会社のコア・コンピタンスとすることができるでしょう。

コア・コンピタンス (Core competence)とは、ある企業の活動分野において「競合他社を圧倒的に上まわるレベルの能力」「競合他社に真似できない核となる能力」の事を指す。
コア・コンピタンスは次の3つの条件を満たす自社能力のことである。

  • 顧客に何らかの利益をもたらす自社能力
  • 競合相手に真似されにくい自社能力
  • 複数の商品・市場に推進できる自社能力

具体例として自動車産業が取り上げられ、ホンダにおけるエンジン技術(芝刈り機や除雪機からF1を含む自動車までコア技術を幅広く展開)や、フォードによる買収前のボルボにおける安全技術などが挙げられる。
引用:https://ja.wikipedia.org/?curid=281014

ビジネスに役立つキーワード「顧客満足度指数」

顧客満足度図

参考図書