マザーズハローワークとは?受けられるサービスと職業紹介内容

厚生労働省が運営する公共職業安定所「ハローワーク」は、利用したことがある人も多いでしょう。
それでは、「マザーズハローワーク」というものは知っていますか?
マザーズハローワークとは、子育て世代に特化したハローワークのこと。馴染みがなく知らない方も多いかもしれません。
この記事では、マザーズハローワークで受けられるサービスや職業紹介内容、利用する上でのメリット・デメリットを紹介します。
子育て中の方はもちろん、「今後出産や子育てを予定しているけれど、仕事への復帰をどうすればいいか気になる」という方にも役立つ情報を紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
- マザーズハローワークは子どもと一緒に通いやすい公共職業安定所
- 子育てに理解のある職場の検索や、仕事復帰の個別相談などが受けられる
- 集まる求人の質は転職エージェントや転職サイトの方が高い
子育て女性を取り巻く就職の現状
働き方改革の一環で、女性の活躍を推進するムードが極めて強くなっています。
少子高齢化などによる人手不足が叫ばれている今、子育てママの就労問題は、日本社会にとって重要な課題の一つです。
では、子育て中の女性の就職活動や就労状況は、現状どのようになっているのでしょうか?
子育て女性を取り巻く就職の現状
- 子育てをしながら働く女性が増えている
- 新型コロナウィルスの影響で、正社員を目指す方が増加
- 子育て中女性の再就職は難しい
- 時短勤務・リモートワークに対応する企業も
子育てをしながら働く女性が増えている
2017年の総務省『就業構造基本調査』によると、2012年を5.4%上回り、25〜39歳の女性の75.7%が就労中と過去最高値を更新しました。
女性活用企業を国が助成金で支援するなどの背景から、子育てをしながら働く女性は年々増加傾向にあります。
30代前後の子育て世代の有業率が落ち込んでしまう「M字カーブ」も、徐々に解消に向かってきていると言えるでしょう。
一方で、非正規雇用の女性の約3割は、税優遇縮小や育児時間確保のために、働く時間を調整している実態も明らかになっています。
新型コロナウィルスの影響で、正社員を目指す方が増加
厚生労働省の調査によると、平成26年時点では、子育て中の女性の約半数が派遣社員やパートなどの非正規雇用で働いています。
しかし、新型コロナウィルスの影響で、正規・非正規の待遇差が明らかになり、正社員を目指す方が増えているようです。
コロナ禍での正規・非正規雇用の待遇差
- テレワークの可否
- 出勤日数の制限と給与形態
- 解雇・雇い止め
毎月決まった基本給がある正社員と、契約状況に応じた支給額となるパート・契約社員とでは、安定感が全く違います。
特に新型コロナウィルスにより苦い思いをした働くママたちは、安定した正社員への転職を目指すべく、すでに動き始めているようです。
子育て中女性の再就職は難しい
正社員を目指す子育てママが増えている一方で、子育て中の女性の再就職はなかなか難しいのが現状です。
子育てママの再就職が難しい理由
- 求職活動中に子供を預ける必要がある
- 育児と両立できる求人条件が少ない
- 子育てママは急な休みや遅刻・早退が多く、雇いにくいと感じる雇用者がいる
- 出産・育児期間をブランクとみなされる
- 仕事が見つかっても、保育園が見つからない
これらの理由などから、正社員を目指していても結果的に非正規やパートとなったり、働くことそのものを諦めてしまう女性も多くありません。
時短勤務・リモートワークに対応する企業も
生産年齢人口の低下による人手不足解消のため、働き方改革の一環として、2016年に「女性活躍推進法」が施行されています。
「女性活躍推進法」が目指すこと
- 女性の出産に伴う離職
- 育児後の再就職時に非正規雇用となる割合の低減
- 女性管理職の割合の低さを是正
また、新型コロナウィルスの影響もあり、テレワーク・リモートワークの導入を進める企業が徐々に増えてきました。
働きたいママにとっては、「定時に出社」が当たり前とされていた頃に比べ、働きやすい社会になりつつあると言えます。
マザーズハローワークとはどんなところ?
厚生労働省の調査「出産・育児等を機に離職した女性の再就職等に係る調査研究事業」によると、就職・転職を希望したい育児中の女性の約半数が、ハローワークやマザーズハローワークの相談窓口を活用しています。
ハローワークの認知度にくらべ、「マザーズハローワーク」のことはよく知らない方が多いようです。
まず、マザーズハローワークとはどんなところなのか、詳しく解説します。
マザーズハローワークとはどんなところ?
- 子育て世代に特化したサービス・設備のあるハローワーク
- 全国202ヶ所にある
- 事前予約での専任相談と予約不要の職業相談がある
- パパ向けの対応も
子育て世代に特化したサービス・設備のあるハローワーク
マザーズハローワークとは、子育て世代を対象にしたサービスや、子育て世代に使いやすい設備のあるハローワークのことです。
そもそも子育て世代向けの職業安定所には、以下の2種類があることをおさえておきましょう。
子育て世代向けのハローワーク
- マザーズハローワーク:施設まるごと子育て世代が対象
- ハローワークマザーズコーナー:ハローワークの一部にある子育て世代向けの施設・相談窓口
全国202ヶ所にある
マザーズハローワークおよびハローワークマザーズコーナーは、北海道から沖縄まで、合計すると、202ヶ所にあります(令和3年1月20日現在)。
ちなみに、マザーズハローワークは全国21ヶ所。ハローワークマザーズコーナーは全国181ヶ所にあります。
詳しい場所は以下の厚生労働省のページから確認できます。
事前予約での専任相談と予約不要の職業相談がある
ここからは、マザーズハローワークおよびハローワークマザーズコーナーのサービスについて説明します。
マザーズハローワークやハローワークマザーズコーナーでは、子育て世代でも働きやすい仕事の紹介や、就職の相談を行っています。
相談窓口としては、事前予約が必要な専任相談と、予約不要の職業相談の2種類があります。
専任相談では、就職希望者に担当がつき、一人ひとりの状況やキャリアにあわせた再就職支援プランを作成してくれたり、応募書類や履歴書の書き方について具体的にアドバイスしてくれたりなど、きめ細かい対応を行ってくれます。
パパ向けの対応も
「マザーズハローワーク」や「マザーズコーナー」という名称を見ると、「父親は対象ではないのか」と思ってしまうかもしれません。
ですが、母親だけではなく、子育て中の父親でも、サービスを利用することが可能です。
マザーズハローワークの設備とは
これまで解説したように、マザーズハローワークやハローワークマザーズコーナーは、子どもを連れて通いやすいようデザインされています。
それでは、具体的にどのような設備があるのか見ていきましょう。
マザーズハローワークの設備とは
- マザーズハローワークの基本的な設備
- マザーズハローワーク東京
- ハローワーク池袋マザーズコーナー
マザーズハローワークの基本的な設備
マザーズハローワークは、ベビーカーでも移動が楽なように、広々と設計されています。
相談窓口では親だけではなく子どもも一緒にいられるよう、子ども用の椅子も用意。また、子どもが退屈しないよう、絵本やおもちゃ、DVDなどを用意したキッズスペースを備えています。
施設によりますが、キッズスペースには、子どもの安全を見守ってくれるスタッフや保育士さんが常駐してくれているところもあります。
就職セミナーの受講中には一時預かりをお願いできる場所もあるなど、子育て世代にはうれしいサービスを提供してくれます。
マザーズハローワークの主な設備・サービス
- 子供用の椅子やキッズスペース
- 子供の一時預かりサービス
- おむつ交換・授乳スペース
- ベビーカー貸し出し
マザーズハローワーク東京
施設のご案内(窓口・各コーナー等) | マザーズハローワーク東京
マザーズハローワーク東京は、JR渋谷駅から徒歩3分の距離にあります。
マザーズハローワークの主なサービス
- 予約不要の「職業相談コーナー」
- 専任の担当者がつき、個々の実情に応じた就職プランを作成できる「マザーズ予約相談コーナー」
- 子どもを見守ってくれるスタッフのいる「チャイルドコーナー」
マザーズハローワーク東京の特徴は、再就職支援セミナーが充実している点です。
「再就職準備セミナー」「税金と保険セミナー」「応募書類対策セミナー」「ビジネスメイクセミナー」など、幅広い内容で再就職を支援しています。
セミナー開催時には毎回託児サービスも完備しています。お子さんにとっても、親から離れて過ごす練習になるかもしれません。
ハローワーク池袋マザーズコーナー
池袋を例に、ハローワークに併設するマザーズコーナーも、どのような設備なのか見てみましょう。
ハローワーク池袋のマザーズコーナーでは、専門の相談員による個別相談や託児つきのセミナーなど、マザーズハローワークと遜色ないサービスを提供しています。
各種情報コーナーでは、子育てと両立しやすい求人情報のみならず、自治体の保育情報や関連機関の情報も手に入れることが可能です。
マザーズコーナーの主なサービス
- 子供連れでも利用しやすい「職業相談コーナー」
- 予約担当制で個別に就職活動プランを提案してもらえる「担当制の個別相談」
- 絵本やおもちゃが揃った「キッズスペース」
マザーズハローワークで受けられるサービスや職業紹介内容とは
マザーズハローワークは、職業相談はもちろん職業訓練やセミナーの提供など、就職支援に関わるさまざまなサービスを提供しています。
マザーズハローワークで受けられるサービスや職業紹介内容とは
- 子育てと両立しやすい仕事の紹介
- ママさん向けの就職相談
- ママさん向けセミナー
- 相談やセミナー時の子どもの一時預かり
子育てと両立しやすい仕事の紹介
マザーズハローワーク併設の端末から、子育てと両立しやすい仕事に絞り込んで検索することができます。
そもそもハローワークではインターネットから求人を検索できますが、子育てと両立しやすい仕事を選んで絞り込めるのは、マザーズハローワークやハローワークマザーズコーナー内にある端末だけです。
また、求人検索のみならず、相談員の方に条件や希望を伝え希望に該当しそうな求人を紹介してもらうことも可能です。
子育て世代向けの就職相談
子育て世代のママさんが就職する場合、仕事内容やキャリアだけではなく、残業の有無や休みの取りやすさ、保育所への預け方など、単身者よりもはるかに多くのことを考えなければなりません。
また、出産やその後の子育てなどで仕事にブランクが生まれるため、ちゃんと復帰できるのか心配になる方も多いようです。
マザーズハローワークでは、子育て世代が抱えやすいような就職活動から実際に働くまでのさまざまな悩みについて相談し、アドバイスをもらうことができます。
ママさん向けセミナー
ママさん向けのセミナーを提供しているマザーズハローワークもあります。
拠点により開催しているセミナーは違いますが、就職準備からパソコン講習、ビジネス向けのメイク方法など多岐にわたるセミナーに無料で参加することができます。
相談やセミナー時の子どもの一時預かり
「マザーズハローワークの設備とは」の項でも紹介したように、マザーズハローワークの中には、保育士が常駐して子どもを一時的に預かってくれる場所があります。
保育園の一時預かりなどでは1時間に数千円ほどの費用が発生してしまうため、無料で利用できる一時預かりはありがたいサービスです。
マザーズハローワークを利用するメリット
マザーズハローワークを利用するメリットについて、改めてまとめます。
マザーズハローワークを利用するメリット
- 子どもを連れて通いやすい
- 保育所などの情報もセットで得られる
- 子育て世代でも働きやすい職場を教えてくれる
子どもを連れて通いやすい
一番の特徴は、設備やサービスなど、子どもを連れて通いやすい施設となっていることです。
他の利用者も子連れで来ていますので、肩身の狭い思いをすることはありません。
保育所などの情報もセットで得られる
就職先の情報のみならず、職場周辺の保育所や幼稚園、学校などの情報もあわせて得られる点も、マザーズハローワークの大きなメリットです。
子育て世代でも働きやすい職場を教えてくれる
子育て世代にとって、頻繁な残業や休日出勤は避けたいところです。
直接「残業はないですか?」「休日出勤はありませんか?」と企業に問い合わせるのも、相手の心象を悪くしそうで気が引けます。
そもそも子育てに忙しく、「一件一件確かめるようなことをしているヒマはない」というのが正直なところでしょう。
マザーズハローワークでは、併設されている端末で、子育てに理解がある職場を絞り込んで検索することができます。
相談窓口経由でも、同様に子育て世代向きの職場を教えてくれるため、効率的に求人を探すことが可能です。
ちなみに、この子育て世代向けの職場の検索は、マザーズハローワークやハローワークマザーズコーナーに直接足を運ばないと行うことができませんので、ご注意ください。
マザーズハローワークを利用するデメリット
このように、子育て世代にはうれしいサービスや機能を持ったマザーズハローワークですが、取り扱う求人の質に関しては注意が必要です。
マザーズハローワークを利用するデメリット
- ハローワークは「職業安定」がメイン
- ハローワークは求人募集の情報量が少ない
- ハローワークは中小・零細企業の求人が多い
ハローワークは「職業安定」がメイン
ハローワークは、そもそも「公共職業安定所」。国民の職業を安定させることを主目的とした施設です。
そのため「これまでのスキルやキャリアを考えた上で、どんなキャリアを今後築いていくか」「どうやってキャリアアップしていくか」といった、個人のキャリアプランを吟味した上での求人企業とのマッチングに関しては、正直なところ民間の転職エージェントに軍配が上がるようです。
ハローワークは求人募集の情報量が少ない
ハローワークの求人検索では情報量が少ないため、その会社で仕事をするイメージがつきづらく、会社を選びづらい、という難点があります。
以下はハローワークが提供している求人検索ページです。
ハローワークの求人票でわかる主な情報
- 就業場所
- 雇用形態
- 賃金
- 就業時間
ハローワークの求人票には事務的な情報しか掲載がないため、仕事の面白さや魅力、社風といった会社を選ぶ基準に乏しく、判断がつかないことも多いかもしれません。
一方民間の求人サイトを見ると、ほとんどの場合、会社としての今後のビジョンや先輩社員へのインタビューなど、より会社のキャラクターや仕事の魅力がわかるような情報が掲載されています。
求人を募集する企業はもちろん、求人サイトの運営会社側も、応募数やマッチングの精度をあげるため、魅力や社風が伝わるよう工夫された内容になっています。
ハローワークは中小・零細企業の求人が多い
給与の良い求人を探そうと思うと、ハローワークでは満足できないことがあるかもしれません。
ハローワークは公営の無料職業紹介所ですので、求人票の掲載は無料となっています。
そのため、人材の採用や定着にあまり費用をかけない中小企業・零細企業の求人が多く集まる傾向にあり、結果として給与などの待遇面の良い求人の割合は低くなります。
一方、転職エージェントや転職サイトは、求人広告の出稿や採用に多くのお金を払うことになります。
経営体力のある大企業や優良企業が集まるため、待遇や条件の良い求人が割合としても高くなります。
マザーズハローワークでの職業紹介の流れ
働きたい女性であっても、もちろん通常のハローワークを活用することも可能です。
通常のハローワークとマザーズハローワークとの違いや、就職までの流れも合わせてチェックしてみましょう。
マザーズハローワークでの職業紹介の流れ
- 通常のハローワークとマザーズハローワークの違い
- ハローワークは求人募集の情報量が少ない
- マザーズハローワークの利用方法
通常のハローワークとマザーズハローワークの違い
通常のハローワークとマザーズハローワークとの一番の違いは、失業申請などの手続きができるかどうかです。
マザーズハローワークでは、雇用保険や職業訓練への申し込みなどの手続きはできず、職業相談・紹介のみの対応となっています。
失業給付や育児・介護休業給付、教育訓練給付などの支給を受けたい場合は、居住地管轄の通常のハローワークに行く必要があります。
また、通常のハローワークが幅広い層の就職支援をしているのに対し、マザーズハローワークでは子育てをする人にターゲットが絞られています。
設備の面はもちろん、求人検索の絞り込みなども子育てママに寄り添っており、子育てをしながら働きたい方のニーズにきめ細やかに対応しています。
ハローワークとマザーズハローワークの違い
- マザーズハローワークでは雇用保険の申請手続きができない
- マザーズハローワークでは職業訓練の申し込みができない
- マザーズハローワークは子育てママの希望に沿ってくれる
マザーズハローワークの利用方法
マザーズハローワークの利用方法は、通常のハローワークとほとんど同じです。
マザーズハローワーク東京の流れを例に、実際の就職活動の流れを見ていきましょう。
1. プレ相談・求職申し込み
事前にネットや窓口などで求職申し込みをし、希望条件などを登録します。
希望に応じて、まずはマザーズハローワークの利用方法やサービスについて説明してもらいます。
2. 職業相談:マザーズ予約相談コーナーも
公開されている求人情報を見ながら、具体的に職業相談を受けます。
マザーズハローワークの職業相談
- マザーズ予約相談コーナー:専任担当者がアドバイス、予約制
- 職業相談コーナー:全般的なアドバイス、予約不要
マザーズ予約相談コーナーは原則として要予約ですが、枠が空いていれば当日でも対応してもらえるようです。
3. 企業の紹介、紹介状をもらう
条件に合う求人があれば、紹介状を発行してもらい、求人企業を紹介してもらいます。
ハローワークの求人に応募するには、ハローワークの紹介状が必要となります。
4. 応募・面接
ハローワークからの紹介状で応募し、面接などの選考に進みます。無事内定となれば就職です!
子育てママの再就職はマザーズハローワークを有効活用!
ここまで、マザーズハローワークやハローワークマザーズコーナーの説明をしてきました。
マザーズハローワークやハローワークマザーズコーナーには、子育て世代が通いやすいよう配慮され、再就職に関する手厚い支援が無料で受けられるというメリットがあります。
また、失業保険の申請や職業訓練の申し込みなど、公的な手続きはハローワークでしかできません。
一方、紹介される求人としては、転職サイトや転職エージェントが扱う求人と比べ、待遇面で見劣りすることもあります。
ハローワークの求人票には事務的な情報しかないため、キャリア全体を考えた時にどの会社を選ぶべきか判断できない、ということもあるでしょう。
マザーズハローワークやハローワークマザーズコーナーのメリットやデメリットを理解した上で、自分に合う方法で転職を成功させましょう。
子育て中の転職については以下の記事も参考にしてください。