カイゼン型のアプローチの肝は強みと弱みの発見 プレゼンで聞き手を夢中にさせるアイデアの見つけ方

下のリンク記事で、成功するプレゼンテーションには魅力的なアイデアが必要であること、そのアイデアを生み出すための二つのアプローチについて解説しました。
アイデアを生み出すための2つのアプローチ
- 日本の製造業が得意としたアプローチ「カイゼン」型
- 米国ベンチャー企業に代表される「イノベーション」型
アイデアの答えは聞き手が知っている!プレゼンで聞き手を夢中にさせるアイデアの見つけ方
今回は、上記2つのアプローチ方法のうち、カイゼン型のアプローチについて詳しく説明していきます。
それでは、早速見ていきましょう。
プラス面に着目し、強化することで差別化を図る
カイゼン型のアイデアというのは、対象となるものの問題点を発見して改善・補強することです。
場合によってはよい面を見つけて、それをさらに強化することで競合との差別化を図ることでもあります。
わかりやすい例として儲からないラーメン屋を考えてみましょう。
まず、プラス面のさらなる強化。
たとえば、このラーメン屋のウリが野菜たっぷりのヘルシーな味噌ラーメンだったとします。
そこで、ヘルシーさにさらに磨きをかけるというやり方です。
以下のアイデアが考えられます。
強みをさらに強化するアイデア
- 野菜のボリュームをさらに増やす
- 季節の野菜などバリエーションから選べるようにする
- 油の量を極端に減らしカロリー控えめにする
ヘルシーさをさらに強化するという施策は、プラス面に着目して売上を増やすということ。
売上が増えれば、自然と利益も増えますが、結果は原価削減ほど確実ではありません。
ただし、成功すれば新たな活路も見出せます。
マイナス面に着目し、それを削減あるいはとり除く
逆に、てっとり早く利益を確保する方法となるのが以下です。
マイナス面を削減するためのアイデア
- 仕入れ先を変更して原価を削減する
- アルバイトを解雇する
- 客の少ない時間帯の営業をやめて水光熱費を節約する
これらはコストというトピックをさらにドリルダウンして、さらに小さな問題点の改善や解消にとり組むというスタイルです。
原価削減という取り組みは、マイナス面を減らすということです。
短期的に目の前の利益を確保するためには確実ではあります。
ですが、やがてサービスが低下し、売上のさらなる低減につながるおそれもあります。
儲からないラーメン屋に対するカイゼン型アプローチ
強みを伸ばし、弱みを強みに変える
それでは、実際のビジネスに置き換えて考えてみましょう。
あなたは大手百貨店の経営企画担当だとします。
ファストファッションの普及や消費全体の冷え込み、ネット通販の台頭などで百貨店の売上は芳しくありません。
そこであなたは現在の百貨店が持つプラス面とマイナス面を冷静に分析します。
そこから自社の改善のアイデアを見出したいと考えています。
あなたなら、百貨店が持つプラス面とマイナス面にどのようなものがあると考えますか?
上の図の4と5から見てとれることは、以下の顧客ニーズです。
「買い物をするためだけに出かけるのが面倒」
「できれば少しでも安いものが買いたい」
かといって値段を下げるだけでは、ディスカウントストアと同じになってしまいます。
せっかくの立地のよさを捨てて通販に走れば、多くの競合と価格競争になってしまいます。
あくまで百貨店としての強みを活かす方法はないでしょうか?
例えば、1から得られる顧客のメリットは、くつろげる、リッチな気分に浸れるといったこと。
2であれば、自分で探さなくても、オススメ商品やサービスを代わりに見つけてくれる、そんなイメージ。
3は、ネット通販にはないリアル店舗だからできることに注力すべきであるということ。
これらをさらに強化し、弱みの部分をとり除くには、どうすべきでしょうか?
例えば、百貨店サイトにECサイトを併設し、ネット上で自由にオーダーし、それに該当する商品をまとめて無料の宅配便で送ってくれるサービスはどうでしょうか?
接客のよさや品揃えがウリなのであれば、顧客ごとにオーダーをまとめるのは難なくできるでしょう。
顧客も店舗に行かず、さらにネットで1品ずつ探す手間が省けます。
手間を考えればトータルとしてはコストは安く済むはずです。
あるいは、立地のよさを活かしましょう。
さらに品揃えや多様性を増やすため、小区画の店舗を安く、若い店舗オーナーに開放するモールに転換するという手はどうでしょうか?
渋谷の109は同様の方法で若い女性のファッション基地として機能しています。
ファッションだけに限らず、バラエティに富んだ若い店舗オーナーが集まるでしょう。
そうなれば、古いイメージも払拭され、店舗は活性化するはずです。
このように、カイゼン型では強みをさらに強化することで、弱みさえ払拭するアイデアを打ち立てることができます。
コラム:プレゼン上手の代表格、ジョブズのテクニックを盗め!「スティーブ・ジョブズ、プレゼン10 か条」
ここから、少し以前の例を取りあげながら、プレゼン本番で成功するためのポイントを紹介します。
使い心地のよいMacbookやiPhoneなどで不動の地位を築き上げた米国アップル社。
立て続けにヒット製品を世に送り出すクリエイティビティもすごいですね。
さらにそのCEOであり、創業者だったスティーブ・ジョブズのプレゼンテーションテクニック。
これも、時代が過ぎた現在でも、製品に負けず劣らず、素晴らしいものです。
スティーブ・ジョブスのテクニックを解説した『驚異のプレゼン』
ジョブズ氏の記事が以前の『ビジネスウィーク』誌に掲載されていました。
プレゼンテーションテクニックを構成する重要なエレメントをまとめたものです。
英語の原文は下記からご覧いただけます。
「Deliver a Presentation like Steve Jobs」
その記事を書いたカーマイン・ガロ氏は、次のように説いています。
ジョブズ氏のようにプレゼンテーションを行なうためのポイントは10個あるとのこと。
これは現在の私たちにも大変参考になるポイントです。
みなさんとシェアしておきたいと思います。その10個のポイントとは、次の通りです。
プレゼン時の10個のポイント
- テーマを明確に示す
- 情熱を見せる
- プレゼンの概略を示す
- 数字に意味を持たせる
- 忘れられない瞬間を演出する
- 視覚に訴えるスライドを用意する
- 1つのショーとして見せる
- 小さなミスやトラブルに動じない
- 機能ではなくメリットを売り込む
- 繰り返しリハーサルをする
数字に意味を持たせ、メリットを盛り込む
これらポイントの中で、筆者も特に重視しているのが下記の3つです。
プレゼン時に重視したいポイント3つ
4.「数字に意味を持たせる」
9.「機能ではなくメリットを売り込む」
10.「繰り返しリハーサルをする」の3つです。
ここでは、上記のうち4と9のエピソードを紹介しましょう。
ジョブズ氏が当時の最新型のiPodを紹介したときのこと。
「5GBの容量だ」という説明をする代わりに彼は「1000曲がポケットに入る」と言いました。
つまり「容量」という工業製品としての数値に着目するのではありませんでした。
それによってもたらされる「ユーザのメリットや価値」を、具体的な数字を使って表現することを重視してたのです。
こうした感覚は本当に大事です。
プロだからこそ、準備に抜かりがない
また、10はすごいことです。
プレゼン素人である一般ビジネスマンでさえ、プレゼンのために十分にリハーサルを行なう人は稀です。
せいぜい、頭の中でシミュレーションするくらいです。
ところが、「このフレーズで、この写真を見せ、次にこのデモを見せる・・・」と、プレゼンのプロと呼ばれるジョブズ氏は、何度も何度もリハーサルをするのです。
ちなみにプレゼンではありませんが、マイケル・ジャクソンにも触れておきましょう。
マイケル・ジャクソン最期のコンサートのリハーサルを映像化
「This is it」
遺作「This is it !」の中で、細かな演出にこだわって、何度もリハーサルを繰り返す姿が描かれていました。
「プロって本当に準備に抜かりがないんだな」、そう感じたものです。
さて、みなさんは10か条を読んでどう感じましたか?
カリスマ経営者にして比類なきプレゼン上手とされていたジョブズ氏。
彼ですら、基本はさほど変わらないということです。
逆に言えば、誰だって、こうしたプレゼンのポイントを押さえることで、ジョブズ流のアピール力を身につけることができる可能性があるのです。