2020年の派遣労働法改正前に確認・変更すべき人事制度

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2020年の派遣労働法改正では、派遣会社が対応すべき項目が主ですが、派遣先の企業も対応が求められます

派遣労働者を受け入れるためには、派遣労働者だけでなく自社で雇用している社員の人事制度も確認し、必要に応じて変更する必要があります

派遣先の企業が派遣労働法改正前に確認・変更しておきたい人事制度を紹介します。

2020年の派遣労働法改正前に確認・変更すべき人事制度の要約

3行要約
  • 派遣会社が「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」のどちらを選んでも、派遣先は人事制度の見直しが必要。
  • 従業員の職務遂行状況を適切に評価し、派遣会社に情報提供することが求められる。
  • 教育訓練や福利厚生に関しては、派遣先にも新たに義務が課せられる。

2020年派遣法改正で派遣先も人事制度の見直しが必要に

2020年派遣法改正で派遣先も人事制度の見直しが必要に
2020年の派遣労働法改正では、同一労働同一賃金の考えのもと、派遣労働者の待遇を改善するための制度変更が行われます

これまで、正社員と派遣社員の間に待遇差がある場合、どこまでが合理的な待遇差であるかが明確にはされてきませんでした。

法改正後には、不明瞭だった待遇差の判断基準が明確になり、派遣労働者の賃金や福利厚生などの待遇を改善することが企業に求められます。

現行の派遣法でも、派遣労働者と正社員の待遇差を是正することは努力義務として定められていますが、法改正後は義務となり、派遣先の企業も対応が必須となります。

義務・配慮義務・努力義務の違い

法令で使われる義務には、「義務」・「配慮義務」・「努力義務」の3種類があります。
この中で、最も強いのは「義務」で、条文では「しなければならない」や「してはならない」などの表現が用いられます。
義務の責任は配慮義務や努力義務よりも重く、怠ると義務違反になり、指導や勧告の対象になります。
「配慮義務」は、条文では「配慮しなければならない」などの表現が用いられます。義務ほどの強制力はないものの、義務を達成するための行動を怠ると義務違反になります。
「努力義務」は、条文では「努めなければならない」などの表現が用いられます。実現することは望ましいものの結果は求められないものであり、法的拘束力もなければ、努力を怠っても罰則はありません
したがって、強制力の強さは義務>配慮義務>努力義務と表せます。

不合理な待遇差を生じさせないよう、法改正後には、2つの方式のいずれかで派遣労働者の待遇を決定します。

派遣労働者の待遇を決定する2つの方式

法改正後、派遣労働者の待遇は以下の2つの方式で決定されます。

派遣労働者の待遇を決定する2つの方式

  • 派遣先均等・均衡方式
  • 労使協定方式

どちらの方式を決定するかは、派遣会社が決定します。重要なのは、派遣会社がどちらを選ぶかによって派遣先の対応が異なる点です。

それぞれの方式の概要と、派遣先に求められる対応を解説します。

派遣先均等・均衡方式

派遣先均等・均衡方式とは、派遣先で働く他の従業員の待遇と比較して、派遣労働者の待遇が均等または均衡になるように待遇を決定する方式です。

派遣先からの情報提供をもとに、派遣会社が派遣労働者の待遇を均等または均衡になるように判断し、賃金などの待遇を決定します。

派遣先の従業員の待遇が基準となるため、一緒に働くスタッフからも理解が得やすく、従業員の待遇が良い企業であれば派遣労働者の定着率が上がるのがメリットです。

ただし、派遣労働者の待遇を決定する基準が派遣先の労働者であるため、派遣先は派遣会社に情報提供をする必要があります。

情報提供のためには、比較対象となる従業員の選出などの事務作業が必要となるため、派遣先の負担が大きいというデメリットがあります。

労使協定方式

労使協定方式とは、派遣会社が派遣労働者と労使協定を結び、一般的な労働者と比較して同等以上になるように待遇を決定する方式です。

派遣労働者の賃金を決定する際には、厚生労働省職業安定局が通達する同じ業務に従事する労働者の賃金の平均をもとに、同等以上になるように派遣会社が定めます。

厚生労働省では派遣労働者の同一労働同一賃金についてのページ内で『労使協定方式(労働者派遣法第30条の4)「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」』を公開しています。

派遣先均等・均衡方式とは異なり、派遣先の従業員が待遇の基準にはならないため、派遣元へ従業員の待遇に関する情報提供をする必要がないのがメリットです。

派遣先だけでなく、派遣会社の事務手続きも簡略化できることから、派遣先均等・均衡方式よりも労使協定方式を選ぶ派遣会社が多くなることが予想されます。

ただし、労使協定方式であっても派遣会社への情報提供は必要であり、人事制度の見直しが求められることに変わりはありません

確認・変更すべき人事制度:人事評価

確認・変更すべき人事制度:人事評価
2020年の派遣労働法改正に伴い、派遣先の企業が人事制度で最も注意しなければならない点の1つが、人事評価です

特に、派遣先均等・均衡方式の場合、自社で雇用している従業員の業務内容が派遣労働者の待遇の基準となるため、適切に評価する必要があります。

労使協定方式の場合にも、派遣労働者の職務遂行状況を提供する配慮義務が課せられることから、人事評価の再確認が求められます。

確認・変更すべき人事制度:人事評価

  • 職務内容を適切に判断できる制度の整備
  • 派遣先均等・均衡方式で求められる対応

職務内容を適切に判断できる制度の整備

派遣会社がどちらの方式を選択するかを問わず、派遣先の企業は、派遣労働者を含む従業員の職務内容を適切に判断できる制度の整備が求められます。

派遣先均等・均衡方式の場合、派遣会社に行う情報提供のためには、自社で雇用する従業員の職務内容を適切に判断することが欠かせません。

労使協定方式の場合には、派遣先での派遣労働者の職務遂行状況が、派遣会社が賃金などを決定する要因の1つとなるため、適切に評価する必要があります。

また、法改正後には、派遣労働者と正社員の間に待遇差があった場合、派遣先の企業にも合理的な説明が求められます

派遣労働者を受け入れる企業であれば、派遣会社の選択する方式に関わらず、従業員の職務内容を適切に判断できる人事制度の整備が急務です。

派遣先均等・均衡方式で求められる対応

派遣会社が派遣先均等・均衡方式を選択した場合、派遣先には比較対象労働者に関する情報を提供する義務が課せられます。

この情報提供を行わない場合は、派遣会社との間で労働者派遣契約が締結できません。

比較対象労働者の選定

派遣会社への情報提供にあたって、まずは派遣労働者の待遇の基準となる比較対象労働者を選定する必要があります

比較対象労働者は、派遣先の企業で雇用している通常の労働者(正社員)の中から、次の条件で選定します。

  1. 「職務内容」と「職務内容および配置の変更範囲」が同じ通常の労働者
  2. 「職務内容」が同じ通常の労働者
  3. 「業務内容」または「責任の程度」が同じ通常の労働者
  4. 「職務内容および配置の変更範囲」が同じ通常の労働者
  5. 上記の1から4に相当するパート・有期雇用労働者
  6. 派遣労働者と同一の職務に従事させるために新たに通常の労働者を雇い入れたと仮定した場合の当該労働者

1に該当する労働者がいない場合は2を、2に該当する労働者がいない場合には3を基準にするというように、上の条件から優先して比較対象労働者を選出します。

「職務内容および配置の変更範囲」の判断方法

「職務内容の変更」には、上司からの業務命令によるものと、人事異動などの「配置の変更」によるものがあり、2つが重複して起こることもあります。
この変更の「範囲」とは、変更によって職務の内容や配置がどれだけ変わり得るかを表しています。
たとえば、一部の部門内でしか異動がない人と、全部門で異動の可能性がある人では、配置の変更の範囲が異なると判断されます。また、転勤の可能性も同様に判断材料として扱われます。
したがって、「職務内容および配置の変更範囲」が同じであるかどうかは、以下の手順で判断します。

  1. 派遣労働者と正社員の間で、転勤の有無が同じかどうか
  2. どちらも転勤がある場合、転勤の範囲(全国が対象か、エリア限定か)が同じかどうか
  3. どちらも転勤がない場合、同じ事業所内での職務内容の変更範囲が同じかどうか

上記の条件を満たし、職務内容や配置の変更によって経験する可能性のある範囲まで同じだと判断された場合、「職務内容および配置の変更範囲が同じ」だと判断できます。
詳しくは、2019年1月30日の通達「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律の施行について」で確認いただけます。

比較対象労働者の待遇はもちろんのこと、選定理由や決定の際に考慮した事項なども派遣会社へ情報提供する必要があるため、必要に応じて選考過程の議事録などを残しておくことをおすすめします。

派遣会社への情報提供

派遣先均等・均衡方式の場合、以下の5点の情報を派遣会社に提供する義務があります

  1. 比較対象労働者の職務の内容、職務の内容および配置の変更の範囲と雇用形態
  2. 比較対象労働者を選定した理由
  3. 比較対象労働者の待遇のそれぞれの内容(昇給、賞与その他の主な待遇がない場合には、その旨を含む。)
  4. 比較対象労働者の待遇のそれぞれの性質と、その待遇を行う目的
  5. 比較対象労働者の待遇のそれぞれを決定する際に考慮した事項

待遇の内容だけでも詳細な情報を求められるので、派遣先均等・均衡方式の派遣労働者と契約する場合には注意が必要です。

労使協定方式で求められる対応

派遣会社が労使協定方式を選択した場合、派遣労働者の職務遂行状況の情報提供が求められますが、派遣先均等・均衡方式ほどの詳細な情報を提供する必要はありません。

ただし、職務遂行状況に加えて、以下の2点を派遣会社に情報提供する義務があります。

  • 派遣労働者と同種の業務に従事する従業員に対して行う教育訓練
  • 福利厚生施設(休憩室、更衣室、食堂など)

これら2点の内容は、労働契約書や就業条件明示書に新たに記載が求められるので、人事担当者は注意が必要です.

確認・変更すべき人事制度:派遣料金

確認・変更すべき人事制度:派遣料金
派遣法改正後は、派遣料金が上がることが予想されます。

派遣労働者を受け入れている企業では、人件費の高騰が予想されるため、それを見越した予算管理が急務です。

派遣料金に関する配慮

派遣会社が派遣先均等・均衡方式を選択した場合、派遣先の企業にも派遣料金に対する配慮義務が課せられます。

派遣会社から派遣料金の変更の申し入れがあった時には、派遣先は適切な金額になるように配慮することが求められます。

派遣労働者の賃金が変更になった場合はもちろんのこと、自社で雇用している社員の定期昇給があった場合にも、派遣料金が変更されます。

上記のような理由で派遣料金が変更された場合、契約途中であっても適切な金額になるよう配慮する必要があるため、注意が必要です。

確認・変更すべき人事制度:教育訓練

確認・変更すべき人事制度:教育訓練
派遣労働者への教育訓練は、本来であれば派遣会社が行うべきものです。実際に、派遣会社に教育訓練を行う義務が課せられているのは、法改正後も変わりません。

しかし、法改正後は、派遣先の企業にも派遣労働者への教育訓練の義務が課せられます

派遣会社が行う教育訓練と派遣先が行う教育訓練の違い

法改正後は、派遣会社と派遣先の双方に教育訓練を行う義務が課せられますが、両者が行う教育訓練には違いがあります。
派遣会社には、派遣労働者のキャリアアップのため、体系的かつ段階的な教育訓練を行う義務があります。
一方、派遣先の企業には、派遣先の業務を遂行するために必要な教育訓練を行う義務が新たに課せられます。

派遣労働者が実際に行う業務に関する教育訓練は、派遣会社が行うよりも、派遣先の企業が行う方が合理的であるとの考えによるものです。

法改正後には、派遣労働者にも正社員と同等の教育訓練を受けさせなければなりません。

また、派遣会社が派遣労働者に教育訓練を行う際には、派遣先はこれに協力する努力義務が課せられます

派遣労働者が派遣会社の実施する教育訓練に参加する際には、可能な限り努力することが求められます。

確認・変更すべき人事制度:福利厚生

確認・変更すべき人事制度:福利厚生
法改正後は、派遣先の企業にも派遣労働者の福利厚生を向上させる義務が課せられます。

確認・変更すべき人事制度:福利厚生

  • 福利厚生施設
  • その他の福利厚生

福利厚生施設

福利厚生施設とは、休憩室や更衣室、食堂など、従業員が勤務先で利用する施設のことを指します。

派遣労働者の場合、福利厚生施設を派遣会社が用意することはできないため、派遣先が提供する福利厚生施設を使用します。

したがって、派遣労働者が福利厚生施設を正社員と同様に使用できるようにするのは、派遣先の義務となります

派遣会社がどちらの方式を選択しても、福利厚生施設を派遣労働者にも同様に提供する義務は派遣先に課せられます。

その他の福利厚生

福利厚生施設以外の福利厚生とは、派遣先が設置して従業員が普段利用している施設を指します。

具体的には、売店や病院・診療所、保育所、運動場、保養施設などが該当します。

これらの福利厚生は、派遣労働者も利用できるように配慮する義務が課せられます

派遣先の義務である福利厚生施設とは異なり、福利厚生は配慮義務であるため、対応が難しい場合にも同様の福利厚生を提供しなければいけないわけではありません。

ただし、これまでは努力義務であった福利厚生が配慮義務になった以上、同様の扱いができない場合には何らかの対応が求められます。

労働者派遣契約書の変更点

労働者派遣契約書の変更点
派遣労働者の待遇改善に伴い、労働者派遣契約の契約書や就業条件明示書にも変更点があります

労働者派遣契約書の変更点

  • 派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度
  • 派遣労働者を協定対象労働者に限定するか否かの別

派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度

法改正後には、労働者派遣契約書に新たに「派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度」を記載する必要があります

これらの記載は、派遣会社が派遣労働者の待遇を決めるために必要です。情報が不十分だと、本来は均衡待遇の派遣労働者が均等待遇として扱われる可能性があります。

そのような事態を防ぐためにも、「比較対象労働者の待遇等に関する情報提供」(様式25号)に記載する内容と程度の情報を記載しておくことをおすすめします。

派遣労働者を協定対象労働者に限定するか否かの別

派遣先の企業は、受け入れる派遣労働者を労使協定方式の対象者のみに限定することができます。これを希望する場合には、労働者派遣契約書にその旨を記載します。

この記載がない場合は、派遣会社へ比較対象労働者の待遇に関する情報提供が必要となるので注意が必要です。

法改正に向けて人事制度の確認・見直しを

法改正に向けて人事制度の確認・見直しを
派遣法改正後は、派遣先の企業も人事制度の見直しが求められます。

新たな制度に対応できるよう人事制度を整備しないと、思わぬところで法令違反などのトラブルが発生してしまうおそれもあります。

派遣会社が対応すべき法改正だと思わずに、派遣先も制度への理解を深め、人事制度の確認と見直しを忘れずに行いましょう。

2020年に施行される改正労働者派遣法については以下の記事でも詳しく解説していますので、参考にしてください。

2020年労働者派遣法改正で想定されるリスクとデメリット

2020年の派遣労働法改正前に確認・変更すべき就業規則