現代日本で師匠・弟子の関係は重要かブラックか?|キャリアニュース

現代日本で師匠・弟子の関係は重要かブラックか?

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人手不足が業種を問わず深刻化しています。洋菓子店においても人手不足は人ごとではなく大きな課題となっています。

不況の時期は手に職があると有利と言われている影響もあり製菓業を含む調理業界は人気の業種でした。

長引くデフレの影響下でも調理業界には比較的安定的に人材が供給されてきましたが、景気が若干ながら改善傾向が見えるとともに深刻な人材不足が発生しました。

かつては安定性が魅力と言われた製菓業界も若手不足に悩んでいます。

製菓業界は古い慣習が色濃く残る業界で、平成に入ってからも雇用主と労働者という現代的な関係ではなく師匠と弟子という徒弟関係が強く見られました。

労働環境も楽なものではなくいわゆるブラック企業と呼ばれるような過剰労働も日常茶飯事でしたが、古い慣習が続いていた理由のひとつが製菓業界ならではの特殊な環境にあります。

街の洋菓子店からホールケーキが消える? 若手が来ず人手不足、「甘くない」働き方改革

盛大にオープンした洋菓子店が、数年経つと元の半数以下のスタッフ数で営業しているケースも珍しくなく、仕込みの手が足りないために空白が目立つショーケースもあちこちで見かけるようになった。

以前は稼ぎ頭であったホールケーキも、近年は予約制にして、より生産効率のよい焼き菓子に力を入れる店が増えている。

「新人が来ない」「続かない」「若手を叱れない」というオーナーの苦悩と、増加する個人洋菓子店の廃業。深刻な人手不足問題の現状と、そこに立ち向かう洋菓子店の姿を追う。
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徒弟制度が通用しなくなった洋菓子の世界

徒弟制度というのは現代的な雇用主と労働者という関係性を前提にしていません。

そこにあるのは師匠と弟子という明確な上下関係です。師匠は弟子に対して責任をもつ代わりに弟子は絶対服従する、というのが徒弟制度を支える根幹です。

このような関係性は現代においては時代遅れとされているものですがメリットも存在します。

若手は技術も経験もない状態で就職しても師匠から技術やノウハウを学べる、師匠は低賃金で雇える労働者を確保できるというメリットが双方に存在しています。

洋菓子の世界一人前になるのは簡単ではありません。美味しいケーキが作れても店を運営していくのは話が別です。

弟子は師匠について成果技術を学ぶだけでなく店の切り盛りの仕方や仕入れルートとのコネクション、業界内での人脈など経営には欠かせないが独力で獲得するのが難しいさまざまなものを得ることができるという金銭には変えがたいメリットを享受しています。

このような眼に見えないメリットこそが徒弟制度の根幹です。弟子は単に技術を学んでいるだけではありません。

師匠について修行しながら獲得しているのは一人前の職人として独立するのに必要な物全てであり、ほかでは学ぶことができないかけがえのない情報やネットワークなどが得られるからこそ低賃金で厳しい労働環境に耐えながらも修行を継続することができていました。

ところがこのような徒弟関係は急速に崩壊していきます。

かつては問屋から材料を仕入れようにも誰かからの紹介がなければ取引お断りという店が当たり前でしたが、今ではインターネットで検索すれば洋菓子店に必要な材料も聞い剤も業務用のものをすぐに購入できます。

昔ながらのなじみの問屋やコネがなければ商売ができなかった時代とは違い現在では厳しい労働環境に耐えて修行をしてまで師匠から吸収すべきものが少なくなってしまった、というのが現実です。

街の洋菓子店は働く価値のある職場なのか?

かつての慣習が通用しなくなった現在、多くの若手が洋菓子店での厳しい修行を敬遠するのはある意味当然です。

彼らは経験を積むための職場を求めていますが理不尽な環境に耐えてまで習得したいものではない、と考えています。

徒弟制度の感覚で低賃金、重労働を押し付けようとしても反発されるのは当たり前なのですが古い価値観から抜け出せないまま人手不足で行き詰まってしまう洋菓子店はなくなりません。

本記事内では「専門学生からは企業やホテルが人気で雇ってみても長く続かない子も多い」という洋菓子店オーナーの声が掲載されています。

人手不足に苦労しているオーナーの本音ですが、雇われる若手の方からすれば劣悪な雇用条件で未来の展望も見出しにくいとなれば安定性のある企業やホテルに就職したいと思うのは当然でしょう。

本記事内では「スタッフの働く目的が変わってきていると感じます。

全員が独立志望というわけではなくて、居心地がよければずっと働く、というのが最近の傾向」という洋菓子店オーナーの声が掲載されています。

このオーナーの声が真実であるならば若手は洋菓子界そのものから離れているのではなく、町の洋菓子店のブラックな労働環境を嫌っているということになります。

若手ベテラン問わず居心地の悪い職場で働きたいと思う人がいるはずがありません。

居心地の悪い職場で人手を確保したいなら給料を上げるか、それ以外のメリットを提示するかの二択です。

かつての洋菓子店では職人として独立するのに必要な経営ノウハウやコネクション、さらにはのれん分けなど独立の際の支援という形で若手に対してメリットを提供していました。

人手不足に悩んでいる街の洋菓子店の中で若手を育てて一人前の職人に成長する手助けを本気でやる気のある店がどれだけあるのでしょうか?

外国人や女性に労働力を求める安易な解決策でいいのか

洋菓子店が人手不足を解決するための労働力としてしか若手を見ていないのなら、若手が洋菓子店を就職先としての価値があるかどうかを冷静に判断するのは当然です。

かつて存在したメリットが崩壊しつつある現在、ブラックな労働環境に耐えても得るものがない職場で働きたくないと考える若手が増えるのは自然な流れです。

記事内では人手不足解消のための取り組みとして外国人と女性を活用する動きが紹介されています。

男性労働力に大きな期待ができない中で外交人や女性に活路を求める動きは多くの業界で見られますが、このような取り組みが人手不足を解消できるという考えには疑問が残ります。

外国人や女性も合理的判断で就職先を選ぶ以上、最終的には現在と同じように企業やホテルに人材が集中する状況になるのは目に見えています。

特に外国人労働者はキャリア形成の意識が高く、便利に使える労働者のつもりで雇うのは非常に危険です。

修行中だからといって過酷な労働環境を強いれば日本人以上に離れてしまう確率は高く、人手不足解消どころか新たな火種になりかねません。

女性労働者に関しても同じことが言えます。再雇用や短時間勤務などで女性労働者を活用するにしても人件費が安くなるわけではありません。

低賃金で重労働という洋菓子業界が抱える根本的な問題を解決しない限り、人手不足の抜本的な解決は望めないでしょう。

この記事のライター

  • 亀井 徹
  • 男性・41歳
  • 社会課題研究家