倒産が止まらない運送業界、働き手の確保に苦しむ|キャリアニュース

倒産が止まらない運送業界、長年に渡り働き手の確保に苦しむ

各分野で人手不足が深刻化する中、長年に渡り働き手の確保に苦しんできた運送業界がとうとう限界を迎えつつあります。

記事内の分析によると2019年の道路貨物運送業者の倒産は8月末時点で前年同期比26.0%と大幅に増えています。この分析結果が深刻なのは運送業界では長年にわたって倒産が続き事業者集が減少し続けている点です。

道路貨物運送の倒産、増加へ転じる可能性

ここに来て一転。6年ぶりに倒産増となる可能性が高まっている。

倒産件数は通年で200件に迫り、負債総額は200億円を超えるペースで推移している。慢性的なドライバー不足に加え、労務管理の厳格化など政策的な外部環境の変化に、業者のコスト管理が追い付いていないケースも多い。

燃料価格も上昇・高止まり傾向が続くなか、近年の仕事量の増大を背景に運賃の値上げなどでなんとか資金繰りをつけていた中小業者の疲弊感が鮮明化し始めている。
続きはー道路貨物運送の倒産、増加へ転じる可能性|Yahoo!ニュース

成長の勢いで参入が相次いだ業界で一時的に倒産が増えるのは市場における自然な淘汰ですが、10年以上倒産件数が高止まりしているう運送業界にあって26%の倒産件数の増加は大きな数字です。

ただでさえ規模の縮小が止まらない中でさらなる追い打ちを掛けるように倒産が急増している現状は運送業界が崩壊の瀬戸際まで追い詰められている証拠にほかなりません。

仕事は増えるが収益があがらない|安すぎる配送料金、低すぎる給料

運送業界の人材不足が深刻なのは決して仕事が減っているわけではないことです。運送業界の需要はネット通販の拡大とともに右肩上がりで増加しています。

記事内では2018年度のトラックによる宅配貨物取扱個数は42億2300万個に達し10年間で約10億個超、増加率にして約30%も増加していることが指摘されています。本来であれば配送荷物数の増加は運送業界にとって喜ばしい事態です。

仕事が増えればそれだけ収益も上がるはずなのですが、残念なことに長引くデフレ不況の影響により取り扱う荷物数は増えているのに収益があがらないという悪循環が続いてしまいました。

運送業界はここ10年間低い宅配料金水準に悩まされていました。

本来であればネット通販は運送業者なしには立ち行かないビジネスなのですから強気に料金交渉できたはずです。

にも関わらず運送業界の経営陣はなぜか料金値上げに弱腰の姿勢を見せ、アマゾンに代表される大口顧客と本来適用すべきではない低水準の特別料金で契約を結んでしまいました。

その結果取り扱い荷物数は急増したのに利益率が大幅に低下してしまい運んでも運んでも全く利益にならない状態に陥ってしまったのです。

一節にはネット通販の荷物を運んで得られる利益は1個あたり8円とも言われ、過酷な労働環境とされる運送業界にはとても見合わない低水準のビジネス環境が長年にわたり続いてしまいました。

アベノミクスによる景気回復でドライバーが大量離職

日本全体が不景気のときはそのような過酷な労働条件でもドライバーを確保することが可能でした。

日本中が不景気なのですから転職しようにも好条件の求人はありません。過酷な労働環境と低賃金に苦しめられていても働き続けるしかなく、必ずしも前向きではないドライバーたちの努力によって支えられてきたのがここ10年の運送業界の実情です。

そんな状況を一変させたのがアベノミクスによる景気回復です。

アベノミクスの効果については見解が分かれるところですが、少なくとも失われた10年と称されるデフレ不況を回復傾向に導いたのは事実です。賃金もわずかながら上書し雇用環境の改善も見られた結果としておきたのが運送業界からのドライバーの大量離脱です。

デフレ不況時は悪条件でも転職先がないことから我慢して働き続けていたドライバーたちですが、景気回復により好条件の求人が見つかるようになった途端に転職が相次ぎました。ドライバーの仕事よりも良い労働環境で給料も上がるのですから合理的な判断として運送業界を抜けるのは当然です。

運送業界の混迷の原因は経営陣の戦略ミス

この動きにあわてたのが運送業界の経営陣でした。この10年間デフレ環境にあぐらをかいていた経営陣はドライバーの待遇改善にほとんど手を付けていませんでした。

そのツケがドライバーの大量離脱を招き運送業界を揺るがしかねないほどの人手不足を引き起こします。

限られた人員をやりくりするだけではどうにもならなくなったところまで追い詰められてやっと重い腰を上げた経営陣は料金の見直しやドライバーの待遇改善に着手しました。

結果として取り扱い荷物の量が減ったり人件費が高騰したりといった動きが見られましたが、収益については低賃金でドライバーを雇っていた頃よりも確実に改善しています。

そもそも運送業界というのは替えの効かないビジネスです。

低賃金でドライバーを雇い低料金で荷物を運ぶという経営戦略そのものが誤りだったのであり、適正水準の料金を請求しドライバーにも働きに見合うだけの給料と待遇を提供するだけで経営状況が改善した事実がそのことを裏付けています。

遅きに失した?経営改革の効果、これからの運送業界はどうなるのか

運送会社は配送ターミナルを建設して長距離ドライバーが連続勤務することなく適切に休憩が取れるような環境を整備したり、荷物の積み込みや積み下ろしなどに専門スタッフを配置し運転に専念できるようにしたりと積極的に労働環境を改善することでドライバーの確保に乗り出しています。

実際に労働環境改善の努力を続けた結果として人手不足状態に改善の兆しが見えていたのですが、倒産件数の増加が止まらないことから経営陣の改革が遅気に失しているのではないかと懸念されています。

これからの運送業界の課題は社員にどれだけ給料を支払えるか、コストを考慮した適正な料金を請求できるかという2点です。

この2点がクリアできれば運送業界の就職状況は確実に改善します。

現在のところトラックドライバーは過酷な労働条件と低賃金のダブルパンチで転職すべきではない職業の上位にランクされていますが業界をあげての改革の取り組みが成功すれば倒産が続く状況に歯止めをかけ、業界で働く人と利用者の両方が満足できる理想的なビジネス環境が実現すると予想されます。

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この記事のライター

  • 亀井 徹
  • 男性・41歳
  • 社会課題研究家

Career Growth 編集部

ニュース編集 担当

株式会社ショーケースと株式会社レーザービームが共同運営・提供しているCareer Growthの編集部提供コンテンツ。

主として第2新卒、20代前半から30代後半までを主とした、グローバルな仕事・就職・転職の情報を扱う。