福祉業界で人材募集にインスタ映えを活用する動き|キャリアニュース

福祉業界では人材募集にインスタグラムを活用する動きが見られる

人材不足が深刻化する福祉業界では人で確保のための新たな取組としてインスタグラムの活用が進められています。

これまでインターネットを通じた人材募集といえばホームページやブログが一般的でしたが、若い世代の中心プラットフォームはSNSへと移行しつつあります。

アクセスしやすいインスタグラムを活用することで福祉業界の仕事を理解してもらい人材募集へとつなげようとする試みです。

インスタグラムで「映える」福祉 人材確保に新たな活路(大阪)

大阪の社会福祉法人が、インスタグラムを広報活動に取り入れたところ、ちょっと「映ばえる」状況が起き始めた。今やコミュニケーションツールの主流となったインスタグラム。人材不足に悩む福祉業界で救世主になる可能性を秘めている。

 成果を挙げているのは、大阪府門真市に本部を置く社会福祉法人「晋栄福祉会」。大阪、兵庫、奈良で介護施設17カ所、保育施設24カ所を運営している。
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インスタ戦略の効果は

具体的な手法として紹介されている表示のスマホ対応やSNSの導入などはオーソドックスな方法ですが大きな効果が見込まれます。

インターネットは膨大な情報にアクセスできるのが最大の魅力ですが、情報の多さが逆に壁になってしまい届けたい人に適切に情報を提供できないというジレンマがありました。

情報そのものを変えるのではなく若者でもアクセスしやすいメディアやツールを導入することで情報発信力を高めるのは広報戦略として正しい選択です。

インスタを活用した人材募集戦略は成功を収め、新規採用者の約8割がインスタグラムをチェックし3割がウェブサイト経由でエントリーしたと報告されています。

数字だけを見れば素晴らしい成果ですが、本当に手放しで喜んでいいのかは疑問が残ります。

インスタ戦略で人材不足を解消できるのか

大前提として、福祉業界で問題になっているのは業界全体での人手不足です。インスタ戦略で人材確保に成功したとしても福祉業界で働く人そのものが増えているわけではないので相変わらず人手不足状態は続いたままです。

ミクロ視点で見ればインスタ戦略は有効な人材募集として働いていますが、マクロ視点で見ると業界内の限られた人材の奪い合いに過ぎません。

現在のところインスタを人材募集に活用しているのは一部の事業者に限られます。

インスタ戦略が効果を発揮しているのは活用している事業者が少ないからという理由が大きく、もしすべての福祉事業者が人材募集にインスタを利用すると募集効果はほとんどゼロに近いものになってしまうでしょう。

2018年11月の職業安定業務統計では有効求人倍率は介護サービス人材で4.3倍、保育士で3.2倍以上と多くの業界で人材不足が深刻化していることを考えても厳しい状況です。

現状を鑑みればインスタグラムによる求人戦略は付け焼き刃の一時的なものに過ぎず、根本的な問題解決手段ではありません。

インスタグラムを通じて職場や仕事内容の理解が深まれば底上げが期待できるとする見方もありますが、効果が現れるまでには少なくとも数年単位で時間がかかる上に必ずしも効果が保証されるものではなく楽観的な見方は禁物です。

人材不足の根本原因は「低賃金」

インスタ戦略に一定の効果があるのは事実ですが福祉業界が抱える人手不足を根本的に解決できるものではありません。

福祉業界の人材不足の一番の原因は知名度が低いことでも印象が割ることでもありません。端的に言ってしまえば、福祉業界が慢性的に人手不足なのは低賃金が一番の理由です。

福祉業界の年収は職種によってばらつきがありますが全体でみると20代で280万円、30代で320万円、40代で340万円となっています。

これは他業種と比べても低い金額です。

働く人全体で見ると40代の平均年収は477万円なので約30%下回っています。福祉業界はキャリアアップが難しく将来性もあるとは決して言えないのが業界の実情です。

仕事そのものにはやりがいを感じていても給料の安さが原因で働き続けることができないという理由で離れていく人は跡を絶ちません。

定着率の低さは未解決

インスタ戦略が必ずしも有効とはいえないのは、募集増には効果があるけれど定着率の向上には効果が期待できないからです。

福祉業界の人材事情を調べてみると人手不足なりに募集はそれなりにあることが分かります。

ある程度の人数が採用されているのに慢性的な人手不足がいつまでたっても解消しないのは新しく雇用した人が長く働き続けない、つまり定着率が低いのが大きな原因です。

採用ししてもすぐやめてしまうため人手不足の状態は変わらず、抜けた穴を埋めるために新たに募集をかけるという自転車操業に近い状態で運営されている次号書も多く見られます。

インスタ戦略は知名度を高めて募集を集める効果はありますが、すでに福祉業界で働いている人たちの定着率を高める効果はありません。穴の底が抜けているときにやるべきなのは穴をふさぐ努力であり、穴埋め用の土をたくさん集めたところで問題は放置されたままです。

新規人材を集めても定着率を高める努力が足りなければ貴重な人材の使い捨てを繰り返すだけです。休養の見直しや業務負担の軽減など定着率向上のための取り組みはそのまま人材募集を高める効果にも繋がります。

人手不足を根本的に解決するのであればまずは定着率を高めるために現状を見直す努力が求められます。

発信力だけでは問題は解決しない

福祉業界に対する世間の理解はある程度進んでいるもののまだまだ不十分です。仕事を理解してもらうための取り組みとしてインスタグラムは有効であり積極的に活用していく方針に異論はありません。

利用者の家族にとっても実情が見えにくい福祉施設の内情を発信してもらえるのは喜ばしいことであり、密室批判の多い介護や保育業界の透明度向上という観点から見ても効果的です。

発信力が問題解決に効果をもたらすのは事実ですがそれだけでは不十分です。

インスタ戦略はひとつの手段に過ぎません。情報発信と同時に福祉業界が抱える構造的な問題の解決への取り組みが進んで初めて人手不足問題解決への道筋がつかめると考えられます。

この記事のライター

  • 亀井 徹
  • 男性・41歳
  • 社会課題研究家

Career Growth 編集部

ニュース編集 担当

株式会社ショーケースと株式会社レーザービームが共同運営・提供しているCareer Growthの編集部提供コンテンツ。

主として第2新卒、20代前半から30代後半までを主とした、グローバルな仕事・就職・転職の情報を扱う。