収集したデータを本人に無断で第三者に販売した問題の深さ|キャリアニュース

収集したデータを本人に無断で第三者に販売した問題の深さ

就職情報サイト「リクナビ」が利用者の閲覧履歴をもとに独自に予測した就職活動者の内定辞退率を利用者に無断で企業に販売していた問題は、政府の個人情報保護委員会による組織体制の見直しや利用者の権利、利益の保護を勧告を持って一応の決着をみました。

当初リクルート側は一連の問題を深刻に捉えておらず対応も後手後手に回った感があり、初動に失敗したことでイメージは大きく損なわれています。

この問題はリクナビにとどまらず就職支援業者や就職情報サイトなど就職活動業界全体の信頼を揺るがす大問題なのですが、業界の動きを見るとどうも深刻さにかけている様子がうかがわれます。

リクナビ問題、社長が謝罪=内定辞退率を分析-データの合否判定利用なし

就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリア(東京)の小林大三社長は26日夜、就職活動中の学生の内定辞退率を予測したデータを企業に販売した問題に関して都内で記者会見し、「学生や企業など多くの方々にご迷惑をお掛けし、申し訳ない」と謝罪した。

同社はリクナビを利用する学生のうち、7万4878人のデータを使って内定辞退率を算出。7983人については本人の同意を得ずに外部に提供した。
続きはーリクナビ問題、社長が謝罪=内定辞退率を分析-データの合否判定利用なし|時事.com

重要データを本人に無断で販売されるという違和感

ニュースでの取り扱われ方をみてみると、一番の問題は独自に収集したデータを本人に無断で第三者に販売したことが問題であるという論調が優勢です。

確かに就職という人生に関わる重大事態においてその生家を左右しかねない内定辞退率というデータを本人の知らない間に売買されるのは極めて深刻な事態です。

データを購入した企業は内定辞退率のデータを実際の採用には使っていなかったと説明していますが、どこまでが本当の話かわかりません。

もしこの事件が明るみに出なければ内定辞退率をもとに採用が左右されていた可能性は否定できず、過去を振り返って同様のケースがなかったという証明もされていないため信用回復には程遠い状態です。

世界的にみてみると個人にまつわる情報の管理は個人に帰属するというのが主流です。

実は今回のケースと似たような騒動は海外でもたびたび発生しています。

サイトの閲覧履歴から購買行動や政治思想を独自に集計し外部に販売したという騒動は今回が初めてではなく、フェイスブックでも過去に似たような個人情報がらみのトラブルが起きています。

本人の知らないところで個人情報が売買されることに不快感を覚えるのは当たり前です。今回の件でもリクナビが責められるのは当然ですが、そのことだけにとらわれて事件の本質を見落としている人が多いのではないでしょうか。

就職情報サイトが権力を持つ危険性

このニュースで本当に恐ろしいのはリクナビという単なる就職業界の一企業にすぎない存在が勝手な判断で就職活動者と起業者のマッチングを妨げる力を持っている、という事実です。

リクナビに代表される就職活動を支援する企業は80年台後半から90年台にかけて急成長し、現在ではその存在抜きには就職活動が成り立たないほどです。

採用側からすると求人情報の掲載や募集人数の増加などのメリットが、就職活動をする側からすると情報検索の利便性や関連情報の修習などのメリットがあるため一見すると誰にとってもメリットがある存在のように思えます。

一歩引いた目線で見ると、リクナビのような就職活動を仲介する業者はとても危険な存在でもあります。

本来であれば単なる受付や門番のような機能しか果たさない存在であるはずなのに、今回のニュースでは勝手な判断で就職活動前に門前払いする力まで持っていることが明らかになっています。これはどう考えても正常な状態ではありません。

就職活動に使われる情報サイトでは過去にもいろいろな噂が流れました。

その中でも誠しやかにささやかれていたのが「学歴に応じて提供される情報が異なる」というものです。

年令や性別など個人情報を同一にして学歴のみを一流大学と平凡な私立大学で入力して比べてみると一流大学のほうは条件の良い一流企業の説明会情報が提供されるが平凡な私立大学では情報が提供されないといううわさでしたが、実際に検証した結果事実であることが判明しました。

今回のケースではデータの無断販売という明らかなルール違反があったために事件が明るみに出ましたが、属性によって提供情報が変わるといったような明確なルール違反にならない形での見えない選別はすでに行われています。

本来であれば単なる仲介者であるはずの就職情報サイトが明確に選別する権限と力を持っているのは危惧すべき事態ですが、そのことを指摘する論調はあまり見られません。

就職情報サイトが学生を選別する力を持つのは極めて危険な事態です。

企業が望む人材が前段階で落とされてしまうのは大問題ですが、それ以前に就職情報サイトの一存で学生の将来が左右されるというのは本来あってはならないことです。

仮に就職情報サイトが明確な意志を持って特定の大学の排除を画策したとすると、提供情報の制限などはっきりとわからない形で学生を締めあげることができてしまいます。

今回の事件は就職情報サイトの持つ権力にメスを入れる絶好の機会でしたが、残念ながら具体的な動きは見られませんでした。

就職情報サイトは誰を幸せにするのか

就職情報サイトはいったい誰のために存在するサービスなのでしょうか。

学生の就職活動は21世紀に入ってから急速に厳しさを増しています。

不景気という社会事情も大きいのですが、就職業界が自らの価値観を高めるために行った活動による影響はあまり指摘されません。

画一化されたリクルートスーツや由来不明の就活マナーなど、これらは全て一昔前には見られなかったものです。

就職情報サイトは就職を希望する人と人材を求める企業を幸せにするのが本来の役割です。

残念ながら現在の就職情報サイトは自らの価値と利益を追求しているのみで、社会的な存在として責任と役割を果たそうという意志が殆ど見られません。

正しい責任感があれば内定辞退率の無断販売などは起きなかったはずで、事件が発生したことが存在の歪みを裏付けています。

就職情報サイトの利便性は否定できるものではありません。これからの就職情報サイトには初心に戻り正しい責任を果たしていくことが期待されます。

この記事のライター

  • 亀井 徹
  • 男性・41歳
  • 社会課題研究家

Career Growth 編集部

ニュース編集 担当

株式会社ショーケースと株式会社レーザービームが共同運営・提供しているCareer Growthの編集部提供コンテンツ。

主として第2新卒、20代前半から30代後半までを主とした、グローバルな仕事・就職・転職の情報を扱う。