若年者雇用対策とは|非正規雇用者(フリーター)の正社員支援制度

若者の雇用を巡る問題には様々なものがあります。

ここでは生涯獲得賃金や保険制度で不利益を被ることが多い若年層のフリーターに焦点を当て、フリーターから正社員への登用を政府が後押しするプログラム「若者雇用促進法」を中心にご紹介します。

若者雇用促進対策とは

なぜ「若者雇用促進対策」が必要か

若年層がフリーターという働き方を選ぶ理由は何でしょうか。厚生労働省が実施したアンケートでは「ただなんとなく」という理由が目に付きますが「他にやりたいことがあるから」、「内定をもらえなかったから」など思いのほか多様です。

しかし不可抗力の外部要因として景気の悪化による就職難があげられます。

平成15年のいわゆる就職氷河期には217万人がフリーターとして働いており、いったんは減りましたが平成21年から再び増加。平成22年には187万人となっています。その後2015年以降、景気回復と共に減少傾向にあります。
         
         出典:厚生労働省資料「フリーター、若年無業者の推移」

フリーターが増え続けるもう1つの要因として、新卒者が3年以内に離職する割合の高さがあります。3割もの新卒者が3年以内に離職。

厚生労働省のアンケート調査では、雇用のミスマッチを示す「なんとなく合わなかった」だけでなく、パワハラ、モラハラ等の「職場の人間関係」、労働法に違反する「残業代の未払い」なども原因に上げられています。

こうした新卒の離職者が再び正社員として転職しているのであれば雇用の流動化という問題に収まるのですが、フリーターとして非正規労働に従事しているのであれば問題です。

        
        出典:厚生労働省資料「新規学卒就職者の離職状況」

いったんフリーターになってしまうと正規雇用での就職が困難となり、若年層以降も賃金水準が低く、保険等の福利厚生の恩恵が薄いフリーターから離脱できない「スパイラル」に陥ることも多数あります。

望んでもフリーターから脱することができない為に悩んでいる若者に効果的な支援策を実施するためにもまずは実態調査が必要とされました。

そして平成23年度「就職氷河期世代も含めたフリーター等の就職支援の強化」という事前事業評価書が厚生労働省で作成されます。

この評価書を元に若者雇用促進法が作られ、平成27年10月1日から施行されました。

知名度の低い若者雇用促進法

しかしつい3年前に施行されたとはいえ認知度が低いのが「若者雇用促進法」です。

実は厚生労働省では若者への周知と認知度を上げる為に作成した若者向けアニメ動画をYouTubeで流しています。

僕らの明日~フリーターの現状に関する若者への周知・広報事業~

上記の動画では大学中退をきっかけにフリーターになった若者が主人公です。こうした若者がどのようにすれば転職活動ができるか動画で説明。「わかものハローワーク」の周知と誘導を狙っています。

他にも異世界転生風のアニメや漫画で「労働法」を学び、ブラック企業やブラックバイトに対抗する知識をつける「今日から使える労働法」という企画もあります。

若者側だけでなく事業主向けもあり、けものフレンズ風雇用ニュース「中小企業等担い手育成支援事業」という若手の人材育成を行う中小企業に融資するプログラムを紹介する変わり種もあります。

こうした苦肉の手法に賛否はありますが、従来のお役所仕事らしくない目線を下げて何とか若者に分かってもらおうとする努力の跡が垣間見られます。

若者雇用促進法はどんな法律?

では若者雇用促進法とはどのような法律なのでしょうか。

若者雇用促進法の主な特徴は、就職の段階を以下の3段階に分け、各段階において総合的かつ体系的な若者雇用対策を行おうとしている点です。対象年齢は主に20~30代です。

なお若者雇用促進法には新卒者を対象とする施策も含まれるのですが、ここではフリーターを対象とした施策を主にご紹介します。

  • 就職準備段階
  • 就職活動時
  • 就職後のキャリア形成

就職準備段階、活動時の対策として「わかものハローワーク」を大都市を中心に設置。その他にも都道府県管轄の「ジョブカフェ」という就職支援センターを運営し、従来のハローワークは年配者が多く混んでいて行きづらいという若者の声を反映して分離しています。

わかものハローワークには民間から登用したキャリアコンサルタントや人事経験者を配置し担当者制を実施。

求職者1人1人に担当者がつきます。またジョブ・カードというツールを用いて履歴書や職務経歴書を自動で作成するサポートをします。資格取得の一覧作成だけでなく、自分の強み、弱みを分析し、ジョブ・カートの記入を通して将来のキャリアプランを練るようコンサルタントからアドバイスします。

わかりやすく言えば民間の転職エージェントで行っていたサービスを国が管理するハローワークでも実施するようになっています。

実際、ジョブ・カードの解説動画にはアデコ株式会社のコンサルタントが出演しています。

正社員経験がない若者の場合、従業員数の多い上場企業中心の案件を扱っている転職エージェントを利用したことがないことが多く、履歴書、職務経歴書の書き方すらわからないという悩みはあるでしょう。

したがってこうした「わかものハローワーク」で一部の転職エージェントが実施している細かいサービスを受けられるのは効果的です。

さらに雇用条件に当たる残業手当の支給や雇用の健全さを示す離職者数等、求人案内に未記入や不確かな点がある求人の場合は該当企業に直接、もしくはわかものハローワークを通して間接的に情報を開示するよう求めることができるように若者雇用促進法で定められています。

またこうした情報の開示を要求した求職者を不利に扱うことがないよう事業者側に義務付けられています。

また就職後の定着支援や、若者の「使い捨て」が疑われる企業などに関する相談も実施しています。

若者雇用促進法では若者が職業選択を行い、能力や希望に応じた就職の機会を得るためには、国、地方公共団体、事業主のみならず、職業紹介事業者等の関係者が適切に支援を行う必要があるという考えをもとに、これらの関係者の責務や連携・協力について規定しています。

フリーターから正社員へ

正社員雇用に積極的な中小企業

正社員経験がある方が書類選考を通りやすくなり転職に有利なことが多いのですが、フリーターから正社員に転職することは難しいとされています。

しかし中小企業は現在、今までにない人手不足に悩んでおり積極的にフリーター経験者を採用しようとしています。
      
出典:リクルートワークス研究所「第33回 ワークス大卒求人倍率調査」

上記の調査では従業員300人未満の事業所は求人倍率4倍を超えています。およそ1人につき4件以上の求人が来ていることになり、完全な買い手市場になっています。

フリーターを雇用した企業の満足度調査

では実際にフリーターを雇用した企業は採用をどう思っているのでしょうか。平成22年度に行われた「フリーター等の活用についての調査研究事業」では以下の満足度調査結果があります。

    出典:厚生労働省委託事業フリーター等の活用についての調査研究事業

これによれば、採用した元フリーターのほぼ全てのスキルについて、「満足している」と回答した企業の割合が「不満がある」と回答した割合を上回っています。

特に、企業が正社員として働く上で重要だと考えているスキル「人格・人柄」や「仕事への熱意」「責任感」といった項目で高い満足度を得ています。

このことからフリーターは実際に働いた場合、その満足度は採用した企業において決して低くないと考えられます。

では何がフリーター経験者と新卒正社員を分けてしまったのかについては、上記の調査によれば長期のキャリア計画を学生時代から一貫して持っていたかになります。

新卒正社員は学生時代から資格取得に熱心なことがデータから読み取れ、対してフリーター経験者は、部活やサークル活動等に力を入れていた背景が浮かびます。ただ採用の際に重視される人柄や責任感という項目に置いてこうした違いは大きな問題となりません。

むしろ部活やサークル活動に力を入れていたことは複雑な対人調整能力が必要とされる職種において適応力の高さとして現れる場合もあり、企業側のフリーター経験者に対する”見えないフィルター”を調査は暗に批判しています。

しかしフリーターの場合、企業がかける教育費が正社員より相対的に少なく、高度な専門知識の取得や職務に関するより深い知識不足が中高年以降のキャリア形成に響いてきます。

業界・企業・国が一体の人的育成サポート施策

人材育成において教育は重要なのですが、実は中小企業も人手の絶対数の不足、新人に教育を施せる高度なスキルを持つ人材不足から育成に問題を抱えています。

このため、若者雇用促進対策の一環として、業界が主体となって中小企業において、正社員経験が少ない労働者に対し、技能修得のための訓練(3年内の雇用型訓練)の実施を支援。実務経験や公的資格を身につけた人材の育成・確保を促進しようとしています。

さらに、この雇用型訓練を受けた者が、訓練を修了するなど一定の要件に該当する場合には、訓練時間に応じて、Off-JT、OJTの賃金助成を国が行っています。

なおこのスキームは先ほど紹介した厚生労働省が作成した「けものフレンズ」風のアニメ「中小企業等担い手育成支援事業」にてわかりやすく紹介されています。


出典:中小企業等担い手育成支援事業の概要

中小企業求人に多い問題点

新卒離職者の多さ

中小企業の人手不足の原因の1つに採用した人材が3年以内に辞めてしまう率が高いことがあげられます。新卒就職者が3年以内に離職する確率は従業員30人未満の事業所と従業員1,000人未満の事業所を比較すると倍近い開きがあります。


出典:厚生労働省資料「新規学卒就職者の離職状況」

離職に伴う人手不足によって1人当たりの業務量が増え、それが大幅な時間外労働に跳ね返り、さらに離職率が上がるという「負のスパイラル」に陥っています。

さらに厚生労働省の調査でも指摘されていましたが、中小企業の事業主自身が労働法に関する知識が不足していることが多く、不当な時間外労働や違法な手当未払いを起こしているケースもあります。

「ブラック企業」の問題

こうした状況を是正するためにまずハローワークを中心とする求人掲載において罰則が儲けられました。

若者雇用促進法では平成28年3月1日以降、労働基準法や職業安定法、男女雇用機会均等法、育児介護休業法に関する規定に違反し、是正勧告を受けたり公表されたりした企業の場合は新卒者等であることを条件とした求人がハローワークでは一定期間不受理の対象となり是正処置が施されるまで求人を掲載できません。

簡単に言うと過重労働を強要する、残業費を出さない、休暇を取らせない等、労働者使い捨ての企業を摘発し、いわゆるブラック企業をわかものハローワークから厳しく排除しようとしています。

しかしペナルティだけでは問題は解決しません。そこで違反のない企業に認定を与え、優先的に人材を紹介するシステムを作りました。それがユースエール認定企業施策です。

「ブラック企業」をシャットアウト?

ユースエール認定企業施策

ユースエール認定企業とは若者の採用・育成に積極的で、若者の雇用管理の状況などが優良であると厚生労働大臣が認定した従業員300人以下の企業です。

認定の条件は以下のように厳しめになっています。

  1. 「人材育成方針」と「教育訓練計画」を策定していること
  2. 直近3事業年度の正社員として就職した新卒者等のうち同期間に離職した者の割合が20%以下
  3. 前事業年度の正社員の月平均所定外労働時間が20時間以下かつ、月平均の法定時間外労働60時間以上の正社員が1人もいないこと
  4. 前事業年度の正社員の有給休暇の付与日数に占める取得日数の年平均が70%以上または年平均の取得日数が10日以上
  5. 直近3事業年度において、男性労働者の育児休業等の取得者が1人以上または女性労働者の育児休業等の取得率が75%以上

これらの厳しい基準をクリアして、ユースエール認定を受けると若者育成に関する助成金が加算されるだけでなく、公共事業の入札も有利になる特典があり、メリットは大きいです。

ユースエール認定の問題点

かなり厳しい制限を付けた為、認定企業数が少ないという問題があります。またフリーターから正社員への転職を希望し、ハローワーク、わかものハローワークで職を探している人の中には少なからず「地元で就職したい」という希望を持っている人がいます。

厚生労働省の若者雇用促進サイトで企業検索すると、地方に絞って検索した場合は数件しか該当企業がヒットしない場合もあります。


出典:若者雇用促進サイト検索結果

上記は大阪で検索した場合ですが、ユースエール認定企業は2件しかヒットしていません。

しかも採用実績のある会社はそのうちの1社です。ただ成果を急ぎ過ぎて審査が緩くなるとそれだけ働く環境が良くない企業が認定されることになり、あまり好ましくありません。

このように中小企業、事業主側への施策は現段階では必ずしも成功しているとは限りませんが、改善は少しずつ進んでいます。

わかものハローワークによるサポート

わかものハローワークを利用するメリット

次に、若者雇用促進法において中心的な役割を果たす職業紹介所「わかものハローワーク」について詳しくご紹介します。わかものハローワークの求人は従業員300人以下の中小企業の案件が多いのが特徴です。また求人紹介のほかに以下のようなサービスを無料で受けられます。

  1. 窓口にて職業相談、職業紹介
  2. 求職者1に1人に担当が付く担当者制
  3. 応募書類作成用のパソコン貸出
  4. 適職診断カウンセリング
  5. 面接トレーニング
  6. 各種講習会、セミナーの実施
  7. 就職に関連する本の無料貸し出し
  8. 希望すれば常駐する心理士によるサポート有り

利用者の口コミからは、わかものハローワークはハローワークに比べて混んでおらず使いやすいという感想が目立ちます。

またキャリアコンサルタントに民間の経験者を採用し、就職するまでサポートしてくれます。ハローワークと違ってかなりポイントをついたアドバイスがもらえるという感想もあります。

しかし担当者に関しては転職エージェントと同じように相性の問題や経験量に当たり外れがあるようです。

わかものハローワークの担当者が転職エージェントと違っているのは、もし仮に就職後に勤務先で過重労働や労働法違反等があった場合は就職後も引き続き相談に応じてくれる点です。

さらに各種講習会でどのように面接の質問を答えればよいのか、転職活動において意識すべき点、改善すべき点はないかグループワークにて問題を掘り下げる試みも行っています。

ともすれば1人で活動し、孤立しがちな求職活動を相談できる仲間に出会える場も提供することで、求職者を精神的に支えます。

先ほど紹介したユースエール認定企業についても、求人要項に出ていない過去の採用実績の詳細等、より詳しく実地的な生の情報をキャリアコンサルタントから聞くことができます。

わかものハローワークのデメリット

実際には採用意欲のない企業が無料をいいことに広告宣伝目当てでハローワークに求人を出す「カラ求人」が口コミで目立ちます。

やはり営利目的でなく無料の掲載がハローワークでは義務である以上、一定数のカラ求人は存在します。こうした企業は過去の採用実績をあえて記入せずに求人掲載をしているので求職者の無駄足になりかねません。

こうしたカラ求人を見破るには独断で応募せず、いったん担当者に相談し、該当企業の過去の面接情報や採用実績情報を貰うのが良いでしょう。

またペナルティが厳しくなりましたがまだ一定数の「ブラック企業」が紛れています。

ただし、これは転職サイトも同じです。俗にブラック企業と呼ばれる企業は求人案内に不自然な過大なアピールを載せていたり、重要な記載が抜けている、もしくは不明な点が多くあったりしますのでそうした傾向のある求人情報には注意が必要です。

ネットの転職口コミサイトの検索やわかものハローワークのキャリアコンサルタント経由で企業情報を聞くとある程度事前にブラック企業を避けることができます。

まとめ

若年者雇用対策、非正規雇用者(フリーター)の正社員支援制度は始まってまだ数年の制度です。

しかし様々な施策を実施しており、利用する方がお得です。ただ、あくまでも営利目的でない国のサービスの為、目の行き届かない部分も多いのが難点です。

中小企業の場合は、労働法に違反しておらず、育成に熱心な会社でも賃金水準が大手より低い場合が多々あり、それが原因でより良い条件を求めて新卒や中途採用者がスキルを身に着けてステップアップを狙って離職するケースもあります。

離職者がいたから一概に「ブラック」と言えない難しい面があります。国が今後数年間で最低賃金の引き上げを計画しているのは、所得格差拡大を防ぐだけでなく、こうした状況も加味してのことでしょう。

最近はフリーターからの正社員就職に強い『ハタラクティブ』『ウズキャリ既卒』『DYM就職』のような転職サイトや転職エージェントもあり、利益を優先しても求人企業の調査、取材が綿密な民間のサービスには大きなメリットがあります。現状では民間と国のサービスの併用が一番おすすめです。

転職サイトや転職エージェントで見つけた求人案件をわかものハローワークで問い合わせ、過去に労働法の違反等がなかったか聞くのもブラック企業を避ける手段の1つです。

知名度のない中小企業でも良い条件の会社もあります。景気回復の後押しもあって、育成制度も良く、残業も少なめでフリーターから正社員への転職を考えておられる方にはおすすめの求人もあります。

諦めずによく探されることをおすすめします。