ハローワークのジョブ・カードの書き方・記入例【完全ガイド】

ジョブ・カードは、職務経歴や職業能力を整理し、就職・転職活動やキャリア・プランニングに役立てるためのツールです。
求職者自身のキャリアが整理して記載されているため、人事・採用担当者への自己ピールにも役立てます。
今回は、ジョブ・カードの活用方法とともに実例を交えながら書き方のポイントを解説します。
ジョブ・カードとは
ジョブ・カードとは、職務経歴の整理や職業能力の見える化に役立てるためのツールです。
ジョブ・カードを作成することで、以下のような活用ができます。
- キャリア・プランニングでの活用
- 在職労働者の実務能力の証明
- 専門実践教育訓練における活用
- 教育訓練における活用
また企業にとっては、求人・採用活動や労働者の職業能力の評価などで活用されます。
ジョブ・カードの主な活用方法
- 職務経験や職業能力を証明するために活用
- 生涯のキャリアプランを形成するために活用
職務経験や職業能力を証明するために活用
ジョブ・カードは、保有する資格や免許、今までの職業経験や職業訓練の履歴情報を整理したものです。
労働者の職務経歴・職業経験を「見える化」することにより、求職活動などでも活用されます。
学生などが就職活動でジョブ・カードを活用すれば、インターンシップの経験や取得した資格などを整理し、人事・採用担当者へスムーズに伝えることができます。
一般的にジョブ・カードはハローワークで作成するイメージがありますが、厚生労働省のジョブ・カード制度総合サイトなどで必要な様式をダウンロードして作成することもできます。
生涯のキャリアプランを形成するために活用
ジョブ・カードを作成することで、自分自身の職業経験や職務能力が整理されます。
また、今後どのような仕事に就きたいのか明確にし、必要な職業訓練を受けることでキャリア形成に役立ちます。
ジョブ・カード活用の流れ
- 職業経験や職務能力の棚卸し・整理
- キャリアプランの作成
- 必要に応じたキャリアコンサルティング
- キャリアプランの実現に必要な職業能力開発(教育訓練や実務経験等)
ジョブ・カードの使い道とメリット
ジョブ・カードは失業してハローワークで作成する人が多く、通常の就職・転職活動で使われることは少ないです。そのため、現状はジョブ・カードの認知度は低いと言えます。
しかし、ジョブ・カードの特性を知れば、就職・転職活動でも様々なメリットがあることが分かります。
以下では、ジョブ・カードの使い道やメリットについて具体的に紹介します。
ジョブ・カードの使い道とメリット
- 求職者:応募書類として活用できる
- 在職者:教育訓練に活用できる
- 企業:国から助成金を受けられる場合がある
求職者:応募書類として活用できる
ジョブ・カードには、今までのキャリアを細かく記入します。そのため、一般的な選考で使われる履歴書よりも多くの情報を企業に伝えやすいです。
ジョブ・カードは厚生労働省の制度であり、就職・転職活動の際に応募書類として正式に活用できます。記入される情報量が多いため、選考を受ける企業に合わせて必要な情報を抽出・編集して活用しましょう。
学生の場合は、キャリア教育プログラムを受けた履歴やインターンシップ・キャリア教育の状況を記入することで、より自分自身を企業にアピールしやすくなります。
また、ジョブ・カードを作成する過程で深く自己分析する機会にもなり、これからのキャリアプランニングにも役立ちます。
在職者:教育訓練に活用できる
ジョブ・カードは、教育訓練の場でも活用されています。
例えば、キャリアコンサルティングでは、「自分が将来どのようなキャリアを目指したいか」「キャリアプランの実現のために、どのような訓練をすべきか」が明確になります。
また、教育訓練実施機関がジョブ・カードに訓練成果を記載することにより、在職者は客観的な職業能力の証明をすることが可能になります。それにより、企業が在職者の職業能力を適切に評価することにも役立ちます。
企業:国から助成金を受けられる場合がある
企業側にとってのジョブ・カードの使い道やメリットは、以下の通りです。
企業にとってのジョブ・カードのメリット
- 職業訓練により人材の育成や確保ができる
- 応募者の詳細な職業能力が把握できる
- キャリア形成支援による企業の活性化や人材の定着
- 国から助成金を受けられる
ジョブ・カードを活用した職業訓練を行い、要件を満たしていると認められた企業は、国から助成金が受けられる場合があります。
例えば、特定訓練コースの企業の事業活動と区別して実施する座学・実技訓練(OFF-JT)では、1人1時間当たり760円、一般訓練コースでは380円の賃金助成が受けられます。
また、特定訓練コースの経費助成も経費の45%が対象です。
特定訓練コースの適格な指導者による指導のもと、事業活動の中で実施する実習訓練(OJT)では、1人1時間当たり665円の実施助成が受けられます。
ジョブ・カードのデメリット
ジョブ・カードの活用・作成は、人によっては手前やデメリットを感じる場合もあります。
以下では、ジョブ・カードを作成する前に知っておきたい注意点を紹介します。
ジョブ・カードのデメリット
- 作成するのに手間がかかる
- 応募書類としての認知度が低い
- 対面の相談や指導は有料の場合もある
作成するのに手間がかかる
ジョブ・カードは「就業経験がある方用」の様式を利用して作成した場合、合計のボリュームは18枚ほどになります。
自分の人生や職業を決める重要な書類になるため、よく考えて丁寧に作成しなければなりません。
初めて作成する場合は数日かかることもあるため、時間に余裕を持ち計画的に進めましょう。
応募書類としての認知度が低い
求職者はジョブ・カードを応募書類として提出し、企業への自己アピールに役立てます。
しかし、既述のようにジョブ・カードは応募書類としての認知度がまだ低く、提出したとしても必ず評価されるとは限りません。
場合によっては、面接などの際に担当者へジョブ・カードについて説明しなければならないケースも考えられます。
対面の相談や指導は有料の場合もある
ジョブ・カードの作成サポートは、各都道府県の独立行政法人が運営している「キャリア形成支援コーナー」やハローワークの「キャリア形成相談コーナー」などで無料で対応してもらえます。
一方、就職・転職などの専門家であるキャリアコンサルタントや民間の就職・転職エージェントに依頼する場合は、有料となるケースが多いです。5,000円から数万円が費用相場であり、相談だけは無料で行っている場合もあります。
関連:ハローワークのキャリアコンサルティングとジョブ・カードとは?メリットと取得手順
基本的なジョブ・カードの作成方法
ジョブ・カードは、利用者の状況や環境によって作成する方法が異なります。基本的なジョブ・カードの作成方法は、以下の3通りです。
ジョブ・カード作成の3つの方法
- Web上・ソフトウェアを使う
- PDFの様式をダウンロードする
- Excelの様式をダウンロードする
それぞれどのような方法なのか紹介していきます。
Web上・ソフトウェアを使う
ジョブ・カードは、厚生労働省のホームページにあるWebサービスやソフトウェアを活用して、作成や編集、印刷することができます。
ジョブ・カード作成支援Web・ソフトウェアは、厚生労働省のジョブ・カード制度総合サイトの質問に回答し、その下にあるボタンをクリックすれば、利用できます。
入力補助機能を利用し質問に回答することによって、応募に必要な情報を抽出したり、蓄積した情報に基づいてエントリーシートの作成支援を受けることも可能です。
また、ジョブ・カード作成支援アプリには、スマートフォン版(iOS版、Android版)もあります。
ジョブ・カード作成支援ソフトウェアのダウンロード|ジョブ・カード制度総合サイト|厚生労働省
PDFの様式をダウンロードする
自宅にパソコンがない方であれば、PDFの様式をハローワークなどで印刷して手書きで記入する方法を取ります。
この方法であれば誰でも簡単にジョブ・カードを作成できますが、全て手書きになるため複数の企業に提出する際は、その都度作成しなければならないため非常に手間がかかります。
ジョブ・カードは1セット18ページほどあるため、時間を有効活用するためにも手書きの方法はおすすめしません。
PDF形式の全様式(zip)|ジョブ・カード制度総合サイト|厚生労働省
Excelの様式をダウンロードする
自宅にパソコンがある方であれば、ソフトウェアをインストールする方法以外にもExcelファイルを使って作成する方法もあります。
こちらの方法であれば、普段からExcelを使っている人なら簡単にジョブ・カードの項目を記入できるでしょう。
PDFファイルと違い、必要ない項目を削除するなど自分なりにアレンジすることができるのがおすすめです。選考を受ける企業が複数ある場合でも、共通している項目はそのままで印刷すれば記入する手間を省けます。
Excel形式の全様式(zip)|ジョブ・カード制度総合サイト|厚生労働省
ジョブ・カードの各シートの書き方
ジョブ・カードには大きく分けて以下の5種類があります。
ジョブ・カードを構成するシートの種類
- キャリア・プランシート
- 職務経歴シート
- 職業能力証明シート
- 職務経歴書
- エントリーシート
それぞれのシートにはどのような役割があるのか、書き方と一緒に見ていきましょう。
キャリア・プランシート
出典:キャリアプランシート(就業経験のある方用)の記入例|ジョブカード制度総合サイト
キャリア・プランシートは、自身の価値観や興味、仕事への姿勢などを整理し、将来のキャリア・プランをまとめるものです。
就業経験がある人用のキャリア・プランシートの項目は、以下の通りです。
就業経験がある人用のキャリア・プランシートの項目
- 価値観・興味・関心事
- 強み
- 将来取り組みたい仕事や働き方
- これから取り組むこと
- その他
価値観、興味、関心事項等は、過去の経験を通して、職業観や興味・関心のあることなどを書き込みます。
強み等は、自身の強みやスキル、弱みをどのように克服したかなどを記入します。
将来取り組みたい仕事や働き方等は、これから挑戦したい仕事や希望する働き方などを伝える欄です。
その他には、自己PRや相談したいことなどを自由に書けます。
職務経歴シート
出典:職務経歴シート(第一面)の記入例|ジョブカード制度総合サイト
職務経歴シートは、今まで経験した職務を記入するシートです。
1面は、自身で勤務期間や職務内容、得られた知識・技能などを記入します。第2面は、勤務した会社が第1面の内容を証明する欄です。
職務経歴シートには以下の項目を記入します。
職務経歴シートに記入する項目
- 期間
- 会社名・所属・職名(雇用形態)
- 職務の内容
- 職務の中で学んだこと、得られた知識・技能等
職務の内容は、担当した業務を挙げるだけでなく、チームの中での役割や実績を具体的に記入します。
職務の中で学んだこと、得られた知識・技能等は、実際のエピソードから成長したことなどを記入するとアピールできます。
また、努力したことや評価されたこと、心掛けていることなどもおすすめです。
職業能力証明シート
出典:職業能力証明(免許・資格)シートの記入例|ジョブカード制度の総合サイト
職業能力証明シートには、学歴や所持している免許・資格、学習・訓練歴などを記入します。免許・資格を記載する際は、証明書類の添付が必要です。
免許や資格を保有していない場合は、受験日が決定しているものに限り、取得前でも記入できます。
職業能力証明シートは、以下の3種類あります。
職業能力証明シートを構成するシートの種類
- 免許・資格シート
- 学習歴・訓練歴シート
- 訓練成果・実務成果シート
免許・資格には、どんな資格なのか、資格を取得した理由、どのようなスキルアップやキャリアアップに繋がったのかなどを記入することがポイントです。
学校や企業独自の免許や資格なども、記入することをおすすめします。応募者のやる気や能力が伝わる可能性があります。
職務経歴書
職務経歴書には、志望動機や職務経験、実務能力などを記入します。
形式は、時系列に経歴を記入する編年体式、現在から過去へ遡っていく逆編年体式、職務ごとに内容やスキルを記入するキャリア式から選びます。
職務経歴書に記入する項目は以下の通りです。
職務経歴書に記入する項目
- 志望動機
- 職務経歴
- 免許・資格/li>
- 学習歴・職業訓練歴
- 活かせる知識・能力・スキル等
- 自己PR
職務経歴書を作成する際は、応募先企業のニーズとマッチするキャリアを記入することがポイントです。
志望動機や自己PRは、簡潔で分かりやすい表現にすることがおすすめです。
ジョブ・カードを活用すれば、自己理解や過去の経験の棚卸、キャリア・プランの構築ができるため、より最適な職務経歴書が作成できます。
エントリーシート
出典:エントリーシートの記入例|ジョブカード制度の総合サイト
エントリーシートは、これまで作成したシートを総合した内容です。写真を貼付けすれば、応募書類として活用できます。
エントリーシートに記入する項目は以下の通りです。
エントリーシートに記入する項目
- 学歴
- 学校の課程で関心を持って取り組んだこと・取り組んでいること
- 学校以外の課程で関心を持って取り組んだこと・取り組んでいること
- 価値観、興味、関心事項等
- 強み等
- 将来取り組みたい仕事や働き方等
- これから取り組むこと等
- 自己PR
- 志望動機
エントリーシートは、自身のキャリア・プランや応募先の企業をしっかり考え、理解していることが伝わるように記入します。
入社後、実際に働いているイメージが思い浮かぶような文章にすることがおすすめです。
ジョブ・カードの書き方のポイント
ジョブ・カードを就職など自身のキャリア形成に有効活用するためには、ただ項目を記入するだけでなく効果的な書き方を押さえることが大切です。
ジョブ・カードの書き方のポイント
- 自己分析を徹底して行う
- キャリアコンサルティングを活用する
- 自己PRに繋がるように書く
自己分析を徹底して行う
就職活動やキャリア形成に役立つジョブ・カードを作成するためには、自己分析を徹底して行う必要があります。
ジョブ・カードの項目に沿ってこれまでの経験を振り返り、自身の適性や強みなどを整理しましょう。
自己理解や仕事理解が深まる「スキルチェック」などを活用することも良いです。
また、何を書けば良いのか分からないという方は、キャリアコンサルタントやジョブ・カード作成アドバイザーに相談することもおすすめです。
自身では気付かなかった長所やアピールポイントが、客観的なプロの視点で見つかる可能性があります。
また、適した職務や今後のキャリア形成に関する有益なアドバイスがもらえる可能性もあります。
厚生労働省 スキルチェック.pdf
キャリアコンサルティングを活用する
ハローワークでは職業訓練や訓練を受けた後のキャリア形成について、専門家であるキャリアコンサルタントに相談できます。
キャリアコンサルタントに相談すれば、自分では気づかない良さやアピールポイントを見つけることができます。
対面での相談は有料のものも多く予約が必要ですが、事前にジョブ・カードを作成しキャリアコンサルタントと相談しながら完成させることで、より精度が高いジョブ・カードを作成できるでしょう。
自分自身の考えや将来への展望を整理できるだけでなく、自身の可能性を広げられるためおすすめです。就職活動を成功させたいと考えるのであれば活用してみましょう。
自己PRに繋がるように書く
ジョブ・カードは応募書類として活用できます。つまり、企業側はジョブ・カードに記載された内容で採用の可否を判断します。
ジョブ・カードには事実を書かなければなりませんが、自己アピールに繋がるような効果的な書き方がポイントです。
例えば、自身の職歴も「〇年間、△△という仕事を行っていました。」という事実を書くのではなく、そこで得たものやできること、今後その経験やスキルをどう活かしていきたいのか、明確に書くようにしましょう。
企業側も応募者が持つスキルや能力を、具体的に活用できる手段があれば採用するかどうかも判断しやすくなります。
効果的なジョブ・カードを作成して転職に役立てよう!
ここまでは、ジョブ・カードの活用方法とともに書き方・記入方法のポイントについて解説してきました。
ジョブ・カードを活用することで、職務経歴や職業能力を整理することができ、就職・転職活動で自己アピールに役立てます。
ご紹介したように、ジョブ・カードはハローワークや厚生労働省のWEBサイトから取得可能です。
必要に応じてジョブ・カードを作成し、就職・転職活動やキャリアプランニングに活用してみましょう。