教育訓練給付金の制度内容と支給条件・申請方法について解説

1998年度に制定されたキャリアアップのために受けたスクールの受講料が一部返還される教育訓練給付金についてご存知の方はかなりおられるでしょう。

実はこの教育訓練給付金制度が2014年度に大きく変わりました。新制度を利用すればキャリアアップだけでなく、キャリアチェンジに伴う必要訓練を受ける際の経済的な負担を大きく減らすことが可能になりました。

ここでは主に2014年度に新しくなり、2018年度にさらに拡充された教育訓練給付金についてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

教育訓練給付制度について

今までの教育訓練給付金とは?

教育訓練給付制度とは1998年度に雇用保険法が拡充されてできたものです。内容は主に以下の通りです。

  • 雇用保険の加入期間が通算して3年以上ある人が対象
  • 入学金・受講費用の2割を国が負担(上限10万)

企業の研修以外に自費でスクールに通ってキャリアアップを目指そうという方にとっては興味を引かれる制度でした。しかし給与水準や貯蓄額がまだ低い20-30代にとって、上限10万は専門学校や高額なスクールの費用を補填するには全面的なバックアップには相当しない額と言えました。特にキャリアチェンジを考えて本格的に学び直そうとする方には不十分な制度でした。

この教育訓練給付制度が人生100年時代を迎え、労働者の能力開発、キャリアアップを支援するために2014年10月に拡充。さらに2018年1月から給付率のアップや条件緩和が定められ、利用しやすくなりました。

教育訓練給付金の法改正について

ではどのような法改正が行われたのでしょうか?

1998年度にできた教育訓練給付金制度は2014年度に「一般教育訓練給付金」と「専門実践教育訓練給付金」の2本立ての制度に変更となりました。

一般教育訓練給付金は今までの教育訓練給付金制度と同じです。厚生労働大臣が指定する民間の一般教育訓練を受講すると受講料が一部返還されます。

指定講座は英会話や中国語、簿記、Microsoft関連のPCスキル等比較的基本的なスキルも含まれます。また厚生労働省が指定する講座でないと一部返還の手続きが取れないので注意が必要です。

一方、専門実践教育訓練給付金の方は今回の法改正でテコ入れされた部分です。かなり本格的な支援制度となりました。長期の専門教育を必要とする訓練を受講する際に支給され、キャリアチェンジに利用できます。看護婦や技術職、会計士や介護福祉職があり、平均2年近くの通学を必要とする専門的な訓練が中心になります。

また長期の通学によって仕事ができなくなる期間をサポートする為、失業手当(基本手当)に該当する教育訓練支援給付金が支給されます。失業手当の受給期間は主に90日ですが、教育訓練支援給付金の方は通学期間中もらうことができます。ただし審査や受給し続けるには厳しい条件がありますので、ハローワークと相談が必要です。


引用元:厚生労働省教育訓練給付制度リーフレットより

青色(最大50%)、赤色の部分(最大70%)が今回拡充された専門実践教育訓練給付金に主に該当する訓練です。厚生労働省のサイトには具体的にどの訓練施設の講座が指定されているのか記載がありますので後でサイトをご紹介します。

事前にすべきこと

一般教育訓練給付金も専門実践教育訓練給付金も以下のように原則雇用保険に3年以上加入していることが条件となります。ただし初めて利用する場合は2年でも受給できます。


引用元:厚生労働省教育訓練給付制度リーフレットより

また途中で離職した期間がある場合、合計で3年となれば資格が得られますので下記のような場合も受給資格があります。

引用元:厚生労働省教育訓練給付制度リーフレットより

ただし平成26年10月以前に教育訓練給付金を受けていた場合は、その時から通算して3年の雇用保険の支払いがあるかが条件となります。

雇用保険の支払期間がどのぐらいあるか、教育訓練給付金を受給できる資格があるか確信が持てない場合、確かめる方法は支給申請の前に「支給要件照会」をすることです。今後、法改正によって要件が変更される可能性は大いにありますので事前の問い合わせをおすすめします。

照会方法は以下の通りです。

  • 「教育訓練給付金支給要件照会票」に必要事項を記入(ハローワークや教育訓練施設で配布)
  • 本人確認の身分証明(運転免許証や住民票の写し)
  • 教育訓練給付金支給要件照会票+身分証明をハローワークに提出(来所または郵送)

電話による照会は不可

一番簡単なのは、身分証明書を持ってハローワークに来所することです。土曜日が隔週で開いているハローワークも多いのですが、混雑して待ち時間が長い所もあります。在職中で時間が取れない場合は、教育訓練給付金支給要件照会票を入手して身分証明書を添えて郵送で問い合わせる方法が良いでしょう。

一般教育訓練給付について

一般教育訓練給付とは

厚生労働大臣が指定する一般教育訓練を受講し、訓練が完了すると訓練所から教育訓練証明書と領収書が発行されます。それをハローワーク経由で提出すると本人が支払った20%(上限10万円)が還ってきます。

対象者は?

対象者は以下の3つの条件に全てに当てはまる方です。

  • 雇用保険に通算で3年以上加入していること
  • 離職した場合は受講開始から1年以内であること
  • 厚生労働大臣が指定する訓練を受講した者であること

詳細は以下のハローワークサイトにあります。
教育訓練給付制度について

対象となる「訓練」

一般教育訓練給付金は厚生労働省が指定する講座を受講しなければ給付されません。どの施設のどの訓練が指定講座なのか以下のサイトで検索できます。


教育訓練給付制度厚生労働大臣指定教育訓練講座検索サイトポータル

また2019年10月以降新たに指定される訓練講座はこちらです。(2019年8月2日更新)
特定一般教育訓練給付制度指定講座一覧【全体版】

簿記や短期で取得できる介護関連の資格が目立ちます。需要の多い英会話スクールでの受講も対象になっていますので、興味のある方は検索をおすすめします。

一例:英会話のイーオン(※英会話が受講できるスクールは他にもあります)

申請方法

一般教育訓練の教育訓練給付金は、教育訓練を受講した本人が受講終了後、ハローワークに来所して以下の書類を提出することで申請できます。

  1. 教育訓練給付金支給申請書
  2. ※教育訓練給付金支給申請書にはマイナンバーの記載が必要です。

  3. 教育訓練修了証明書
  4. ※受講した指定の訓練機関にて、受講終了後に発行されます。

  5. 領収書
  6. 本人確認書類
  7. マイナンバー確認書類
  8. 雇用保険被保険者証
  9. 返還金明細書
  10. ※受講した指定の訓練施設にて、受講修了後支払いが完了した際に発行されます。

  11. 払い渡し希望の金融機関の通帳・キャッシュカード(郵送の場合はコピー)
  12. 教育訓練経費等確認書
  13. ※入学料+受講料のこと、教科書(テキスト)代金、検定料等は含まれません。

基本、ハローワークに来所しての窓口申請です。郵送はやむを得ない場合のみです。
詳細は一般教育訓練の教育訓練給付金支給申請手続きについてを参照してください。

支給額について

一般教育訓練給付金の支給額の概要は以下の通りです。4,000円を超えない場合は支給されませんので注意は必要です。1回支給されるとその後3年は雇用保険に加入した状態でないと申し込めませんので、どの訓練講座を受講して、支給してもらうのか事前に計画した方が良いでしょう。

支給額のポイント

  • 教育訓練経費の20%(上限10万円)
  • 訓練期間にかかわらず給付回数は1回
  • 4,000円を超えない場合は支給対象とならない

専門実践教育訓練給付について

専門実践教育訓練給付とは

専門実践教育訓練給付は、中長期的なキャリア形成を支援するために作られ、2018年の追加の法改正でさらに給付率が拡大されました。そのため専門的な訓練が対象となります。

給付率は一般教育訓練給付よりも高く50-70%です。50%分(年間上限40万円)は訓練中ハローワーク経由で支給されます。支給申請は6か月ごとで原則2年最大3年までできます。訓練を終えた後資格等を取得し、1年以内に就職に結びついた場合は残りの20%(年間上限56万円)の追加支給が受けられます。

訓練中から支給されるため、失業手当もしくは教育訓練支援給付金をもらいながら通学している場合は、経済的な負担をより少なくすることができます。ただし、出席日数が足りていなかったり、極端に成績不良の場合は支給が途中でストップされてしまいます。

対象者は?

対象者は一般教育訓練給付金の場合と同じです。以下の3つの条件に全てに当てはまる方です。

  • 雇用保険に通算で3年以上加入していること
  • 離職した場合は受講開始から1年以内であること
  • 厚生労働大臣が指定する訓練を受講した者であること

詳細は以下のハローワークサイトにあります。
教育訓練給付制度について

対象となる「訓練」

対象となる訓練の分野は以下にグループ分けされます。いずれも長期間の訓練が必要な分野であり、またAIや情報セキュリティなど人材育成が国家的に急務とされる分野が目立ちます。

  1. 国家資格を必要とするような専門的な業務
  2. 看護師、介護福祉士、保育士、美容師、弁護士(法科大学院)、教職(教育大学院)

  3. 専門学校の職業実践専門課程(訓練期間2年)
  4. 法務系の資格取得に実績のある専門学校、看護、介護福祉系の民間の専門学校等が主に含まれる。

  5. 大学院等の厚生労働省が指定した職業実践力育成プログラム
  6. 通信制を含む看護師、介護福祉士、経営学修士(MBA、MOT)等の大学院プログラム、自動車整備の職業訓練も含む

  7. 情報通信技術に関する資格取得を目標とした課程(訓練時間が120時間以上(ITSSレベル4相当以上のものに限り30時間以上)かつ期間が2年以内)
  8. 情報技術(oracle、Cisco)等の訓練を実施する講座、訓練コース等

  9. 第四次産業革命スキル習得講座(訓練時間が30時間以上かつ期間が2年以内)
  10. AI、データサイエンティスト、情報セキュリティエンジニア等、国家的に人材の育成が急務とされる分野

対象講座の検索は一般教育訓練給付と同じ以下の検索サイトです。
教育訓練給付制度厚生労働大臣指定教育訓練講座検索サイトポータル

また一覧は厚生労働省のこちらのサイトでPDFにて作成されています。(2019年8月6日更新)
受講したい訓練の種別が決まっている場合は検索より一覧から探した方が早いかもしれません。
専門実践教育訓練指定講座一覧(2016年10月~2019年10月指定)

申請方法

受講前に提出する書類は以下の通りです。

  1. 教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票(ハローワークや訓練施設で配布)
  2. ※教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票にはマイナンバーの記載が必要です。

  3. ジョブカード(キャリアコンサルティングでの発行から1年以内)
  4. 本人確認書類
  5. 個人番号(マイナンバー)確認書類
  6. 雇用保険被保険者証
  7. 証明写真2枚
  8. 払い渡し希望の金融機関の通帳・キャッシュカード(郵送の場合はコピー)

訓練期間中、期間修了後に支給申請する際の提出書類

  1. 教育訓練給付金の受給資格者証(受講開始前の手続き後にハローワークから交付)
  2. 教育訓練給付金支給申請書
  3. ※教育訓練の受講中と終了後に訓練施設から用紙が配布されます。

  4. 受講証明書または専門実践教育訓練修了証明書
  5. ※教育訓練の受講中と終了後に訓練施設が修了認定を下した場合交付されます。

  6. 領収書
  7. 返還金明細書
  8. ※訓練施設から発行されます。

  9. 教育訓練経費等確認書
  10. ※入学料+受講料のこと、教科書(テキスト)代金、検定料等は含まれません。

  11. 資格等を取得し、残りの還元20%の給付を必要とする場合は資格取得を証明できる書類

基本、ハローワークに来所しての窓口申請です。郵送はやむを得ない場合のみです。
詳細は専門実践教育訓練給付金のご案内を参照してください。

支給額について

専門実践教育訓練給付は50%支給され、訓練期間中から受け取ることができます。6か月ごとに原則2年最大3年まで申請が可能です。年間の給付上限は40万です。また訓練期間終了後、1年以内に資格を取得し就職した場合は追加で20%(年間上限56万)の給付を受けることができます

支給額のポイント

  • 訓練期間修了後、資格取得、1年以内に就職した場合20%追加(年間上限56万)
  • 原則2年最大3年の訓練期間中6か月ごとに申請し、給付を受けることができる(上限年間40万)

事前にキャリアコンサルティングが必要

専門実践教育訓練給付や指定コースを受けるには事前にハローワークでキャリアコンサルティングを受ける必要があります。ハローワークによりますが、キャリアコンサルティングは事前予約制です。電話等で最寄りのハローワークに詳細を確認した方が良いでしょう。

その際にジョブ・カード(転職エージェントで行う職務経歴書の作成・登録と類似)の作成が求められます。ジョブ・カードの詳細は厚生労働省のサイトにも掲載されています。


ジョブカード制度総合サイト

教育訓練支援給付金について

専門実践教育訓練給付制度において非常に有用なのが訓練期間中、失業手当(基本手当)に該当する教育訓練支援給付金が支給されることです。教育訓練支援給付金の受給資格は45歳未満です。

雇用保険に加入していた場合、通常勤続10年未満であれば失業手当(基本手当)が支給される期間は90日です。しかし教育訓練支援給付金の場合、受講中の所得保証として離職前直近6か月の日当の80%が訓練期間中(原則2年最大3年)にもらえます。ただし失業手当(基本手当)の受給資格がある90日間は教育訓練支援給付金は支給されません。

失業手当(基本手当)の支給が日額の50%ですから大幅に保障額が上がることになります。また教育訓練支援給付金の場合はアルバイトも基本的にOKですが、訓練期間中に欠席が多かったり極端な成績不良の場合は支給がストップされますので、できるだけアルバイトはしない方が望ましいでしょう。

どうしても必要な場合は、ハローワークのキャリアコンサルタントに相談した方が良いです。

また受講する予定の訓練が通信制や夜間大学院の場合は教育訓練支援給付金は支給対象とはなりません。

この教育訓練支援給付金は2022年3月末までの暫定処置ですので、2022年以降変わる可能性があります。これ以降に教育訓練支援給付金の支給を希望する場合はハローワークに問い合わせた方が良いです。

どんな人が対象?

ここでわかりやすくするためにモデルケースをあげます。

モデルケース1 事務職から看護師へキャリアチェンジ

製造業で営業事務を担当していたAさん(30歳)は、一生キャリアを築ける資格取得を目指して専門実践教育訓練給付制度を使い、看護師へのキャリアチェンジを計画しました。

  • Aさんが看護専門学校で掛かった費用は3年で入学料+受講料で180万
  • 事前に審査し15万円が半年ごとに支給(計90万円(50%))されました。
  • 更に、資格を取得し1年以内に再就職。結果、20%分の計36万円が追加支給されました。

また受講期間中は教育訓練支援給付金を受けていたため、月額にして約12万が支給されていたため、ほとんどアルバイトをせず学習に集中することができました。

モデルケース2 貿易事務業務に役立つ英会話TOEICコースを受講しキャリアアップ

商社で貿易事務を担当していたCさん(25歳)は、業務で使用する英語のスキルを磨くため、TOEICの大幅アップを目指して厚生労働省指定の英語学習コースを受講しようと計画しました。Cさんのケースは一般教育訓練給付金に当たります。

  • Cさんが英語専門学校で学んだ期間は1年。掛かった費用は入学料+受講料で40万でした
  • 受講修了後、専門学校で修了証明書を貰いハローワークにて手続きを実施。8万円が支給されました

キャリアチェンジ考えるなら20-30代のうちに計画を

以上、2014年に法改正された教育訓練給付金制度についてご紹介しました。

一般教育訓練給付金は業務の範囲内でのキャリアアップや知識の拡充、足りない範囲の知識を補填をしたい場合に有効活用できます。

一方、専門実践教育訓練給付制度は、人生100年時代を迎え、より専門的、実践的な分野に本格的にキャリアチェンジをしたい場合に有効活用できる制度です。通学期間中の所得保証もあり、経済的な支援もあります。

いわば落ち着いて学習に集中できる環境が得られるこれまでにない制度です。社会人にとって難しかった継続して学べるチャンスが与えられたことになります。しかし、学習期間中の所得保証に当たる教育訓練支援給付金が得られる上限は45歳までです。

もし制度を利用して本格的なキャリアチェンジをお考えでしたら、20-30代のうちに計画されることをおすすめします。