くるみん認定(次世代育成支援対策推進法)制度と活用のメリット

くるみん認定制度は、仕事と育児の両立をサポートしている企業に対して厚生労働省が認定する公的な制度です。「次世代育成支援対策推進法(次世代法)」に基づき2007年から運用されているくるみん認定やプラチナくるみん認定を取得すると、企業のイメージアップを含め様々なメリットが得られることが期待できます。

今回はくるみん認定・プラチナくるみん認定を検討している、もしくは将来検討する予定の企業に向けて、制度の内容やメリットを詳しく紹介します。

くるみん認定制度の特徴とくるみんマークについて

くるみんマークは少子化対策を念頭に置き、子育て支援に積極的に取り組んでいる企業に発行するものです。

事業者が次世代育成支援対策推進法に基づいて行動計画を策定し、計画に定めた内容の目標を達成することで「子育てサポート企業」の認定が受けられます。

くるみんマークには認定取得年と「子育てサポートしています」の表記が入ります。このマークによって、子育て支援をしていることが周知できます。

くるみん認定は行動計画を策定・実施するごとに申請を行えます。申請内容が認められれば認定を受けられ、認定回数に応じてくるみんマークの星の数が増えます。

くるみんからプラチナくるみんにレベルアップするとデザインが変わり、複数ある色から選べるようになります。

プラチナくるみんは1社につき1回のみの申請・認定となり、認定を受けた後は、行動計画の策定・届出の代わりに毎年少なくとも1回、「次世代育成支援対策の実施状況」を公表する必要があります。万が一申請後の審査に落ちてしまった場合の再申請は可能です。

「くるみん」という言葉には2種類の意味が含まれており、赤ちゃんの「おくるみ」と「職場ぐるみ」を掛け合わせています。

これは「職場全体で子育てを支援していこう」という意味で、具体的には事業主が少子化問題や男女の育児休暇の整備に取り組んでいくことを表現しています。

子育て環境の整備と施行には職場全体が一丸となって取り組む必要があり、職場内でのコンセンサスも取れていなければなりません。

そのため事前に周知活動を行い、育児休暇や子育て支援に関する取り組みを従業員に把握・同意してもらわなければならないので、まさに「職場ぐるみ」での活動が重要となるのです。

次世代育成支援対策推進法とは

次世代育成支援対策推進法は、次代を担う子どもが健やかに育つよう環境整備を図るために、国と地方自治体、企業が努力をすることを目的として2005年に施行された法律です。

常時雇用の従業員数が100人以上の企業は従業員の子育て支援についての計画を策定し、厚生労働大臣に届け出を行うことを義務付けています。

くるみん認定制度の設立経緯

少子高齢化が進み労働人口が減少している現状、次世代の担い手となる子どもを産み育て安い環境を整備し、誰もが長く働けるような環境を整備することが求められています。

制度の整備も含め、就業環境を整えることで、出産・育児による従業員の退職を防ぎ、優秀な人財を長期間にわたり確保しやすくなります。

近年では少子化と同時に労働人口の減少も問題となっているため、国は若い世代に安心して仕事に入ってもらえるよう、くるみんやプラチナくるみん認定制度を推進しています。

次世代育成支援対策推進法による子育て支援の義務化

次世代育成支援対策推進法は安心して子育てができるよう、事業主に産休や育休を含めた子育て支援制度の整備を義務化した法律です。

従業員100名以下の企業は努力義務となりますが、ワークライフバランスが重視される現状、安定的な雇用を確保するためには子育て支援や支援環境のサポートはすべての事業主にとって必要不可欠といえるでしょう。

出生数の減少を受け子どもを育てる社会を目指している

少子高齢化が問題となっている日本では、女性も重要な働き手となります。

出産や育児で女性従業員が退職してしまうと、代わりの人材を雇い入れて教育していくには人件費や時間がかかります。新人社員の教育や育成も同様に、時間とコストがかかることは言うまでもありません。

長期的な視点で考えても、従業員が退職せずに長く働き続ければベテラン社員に近づいていき、業務効率がアップ。企業へのリターンやメリットも大きなものになっていくと考えられます。

育児と仕事を両立したい社員の増加

くるみん認証を受けた企業は、育児に積極的であり従業員の子育てと仕事の両立を応援してくれるイメージが付きます。

事実、子育てに支援を行っていなければ認証を受けることはできないので、企業へのポジティブなイメージが広がり、仕事と育児を両立し長期的に活躍したい人が応募しやすくなります。

くるみん・プラチナくるみん認定制度のメリット

くるみん・プラチナくるみんを取得するとどのようなメリットがあるのでしょうか。

企業のブランドイメージが向上する

くるみん認定を受けると、認定マークが企業の広報活動や企業の製品・広告・印刷物・インターネットなどによる広報に掲載できるようになります

制服や器具、車、作業場にも使用でき、募集広告や募集に関する案内文書の紙面にも掲示できるため、広く広報活動や周知活動を行うことができ、就職や転職を希望する人に広くアピールすることが可能に。

子育て支援を行っている企業とそうではない企業とでは、社員を大切にする企業文化を持つサポート精度の整った企業というイメージを与えやすくなり、企業イメージの向上に役立ちます。

税制優遇措置が受けられる

認定企業になると、事業における建物などの取得や事業所の増改築で減価償却が優遇制度として受けられる(くるみん税制)他、その他の税制優遇措置が適用されます。

具体的には、青色申告書を提出し一定期間内にくるみん認定を初めて受けると、受けた企業では、認定を受けた1年間の事業年度に新築・増改築した建物などは以下のの割増償却率で割増償却することができます。

採用率・社員の定着率が上がる

くるみん認定を受けると「厚生労働省に子育て支援を行っていると認められている」ことが周知できるので、子どもを持ちながらでも仕事で活躍していきたいと考えている人の目に留まりやすくなります。

子育てを支援する体制ができれば出産や育児のために離職する社員が減り、育児休業が取りやすい社内環境もできあがるため、社員の定着率が上がります。

育児休業を取得することへの重要性が周知されれば、業務の引き継ぎや協働体制が築けるようになるため、業務の効率化が進む可能性も。

育児休業や子育てサポートシステムの定着化までには多少時間がかかるかもしれませんが、職場で一丸となって取り組むことで従業員の協力体制の構築やモチベーションアップ、定着率の向上が期待できます。

就活中の学生や社会人の求職者にとっては「仕事と子育ての両立ができるかどうか」は重要な基準となりますから、末永く雇用したい企業と、長く働きたい社員双方のニーズがマッチしやすくなり、採用率アップも期待できます。

くるみん認定取得済企業の実例

くるみん認定を取得した企業の実例を紹介します。

ANAエアポートサービス株式会社

ANAエアポートサービス株式会社では育児を行っている社員を支援するために、両立支援として懐妊休業・早朝/深夜業の制限・育児休業・フレックス勤務制度・短時間勤務制度・短日数勤務制度・特別休暇制度・テレワーク制度・時間外労働免除/制限を制度として用意しています。

育児や配偶者の転勤などやむを得ない事情で退職した社員には「カムバック採用」を実施。さまざまな取り組みが評価され、プラチナくるみん認定を受けています。

参考:ANAエアポートサービス株式会社「ダイバーシティ&インクルージョン

アサヒビール株式会社

アサヒビール株式会社では多様な働き方を支援するために、育児休業・産前産後休暇・配偶者出産休暇・育児就業時間制度(一日最大2時間分の就業を免除)を整えています。

勤続3年以上の従業員が結婚・妊娠・出産・育児・家族の看護や介護・配偶者の転勤などで退職をした場合、規定の条件が満たされていれば再雇用を認める「ウェルカムバック制度」なども用意。

育児休業制度の利用者も2014年から2018年にかけて毎年着実に増加しています。

参考:アサヒビール株式会社「ワーク・ライフ・バランス

株式会社ゆうちょ銀行

株式会社ゆうちょ銀行では一般事業主行動計画を策定しライフステージに合わせた各種支援制度を整備。2010年から3期にわたってくるみん認定を受けています。

育児休業取得者や子どもの看護休暇取得者の人数を増やしながら、仕事と家庭の両立支援を継続。

社員にはeラーニングサイトで出産・育児に関する情報や職場復帰後の仕事に関する情報の周知を行い、ワークライフバランスに関するセミナーを幹部社員・育児休業からの復帰者のそれぞれに実施しています。

参考:株式会社ゆうちょ銀行「ダイバーシティ・マネジメントの推進

くるみん認定を受けるための条件

くるみん認定は以下の10条件を満たす必要があります。

  1. 雇用環境の整備について、行動計画策定指針に照らし適切な一般事業主行動計画を策定したこと
  2. 行動計画の計画期間が2年以上5年以下であること
  3. 行動計画を実施し、計画に定めた目標を達成したこと
  4. 平成21年4月1日以降に策定・変更した行動計画を公表し、労働者への周知を適切に行っていること
  5. 男性の育児休業等取得について、次の①または②を満たすこと
  6. ①配偶者が出産した男性労働者のうち、育児休業等を取得した者の割合が7%以上であること
    ②配偶者が出産した男性労働者のうち、育児休業等および育児休業に類似した企業独自の休暇制度を利用した者の割合が15%以上であり、なおかつ育児休業等をした者の数が1人以上いること

  7. 計画期間において、女性労働者の育児休業等取得率が75%以上であること
  8. 3歳から小学校就学前の子を育てる労働者について「育児休業に関する制度、所定外労働の制限に関する制度、 所定労働時間の短縮措置又は始業時刻変更等の措置に準ずる制度」を講じていること
  9. 労働時間数について、以下の両方を満たすこと
  10. ①フルタイムの労働者等の法定時間外・法定休日労働時間の平均が各月45時間未満であること
    ②月平均の法定時間外労働60時間以上の労働者がいないこと。

  11. 次の①~③のいずれかを具体的な成果となる目標を定めて実施していること
  12. ①所定外労働の削減のための措置
    ②年次有給休暇の取得の促進のための措置
    ③短時間正社員制度、在宅勤務、テレワークその他の働き方の見直しに資する多様な労働条件の整備のための措置
    法および法に基づく命令その他関係法令に違反する重大な事実がないこと

10条件を遵守し、行動計画に沿って目的を達成することが最低限の認定条件となり、次世代育成支援対策推進法に規定される基準に適合しなくなった場合や認定一般事業主として適当ではなくなった場合(社会問題となる事件を起こしたり不正の手段により認定を受けた場合)には認定が取り消されます。

上記以外にも認定の継続には一定の基準がありますので、参照ください。
参考:厚生労働省「次世代育成支援対策推進法関係パンフレット 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、くるみん認定・プラチナくるみん認定を目指しましょう!!!(平成30年10月)

社内の現状とニーズの把握

ここから、くるみん認定の申請に必要となる「行動計画」の策定方法の一例をご紹介します。
最初に、行動計画が企業の実情に即したものとなるように、仕事と子育ての両立にあたって障害となっているポイントや労働者のニーズを把握しましょう。

たとえば、妊娠・出産を機に退職する労働者数や、育児休業・子どもへの看護休暇の利用者数(男女別)とその利用期間、ワークライフバランス支援制度の認知度や労働者の利用意向をチェックします。

労働者の要望は多岐にわたりますので、それらをまとめるとともに、「会社で今後検討・実施してほしい支援制度」についての意見も広く募る必要があるでしょう。

こうしてニーズが把握できた後は、具体的に実施するべき事と目標達成までの期間をまとめた「行動計画」を策定することになります。

行動計画の策定・労働者への周知

ニーズや問題点を把握出来たら、次は、自社で仕事と育児の両立を妨げている要因をピックアップし、従業員がどのようなサポートを望んでいるかを把握します。

たとえば、過去5年程度を遡って妊娠や出産を機に退職した従業員がどの程度いたかをチェックします。また、現時点までに子育てを行っている従業員がどの程度いるかも併せて確認しましょう。

さらに、育児休業や子どもの看護休暇、育児のための働き方などを確認します。休暇が必要な従業員の人数と性別、最適な休暇期間をニーズとして把握してください。

把握したニーズや従業員の意見をまとめた後は、具体的な行動計画を策定します。

そして、浮かび上がった課題に優先順位を付け、何から整備すれば良いのか優先順位を決めてていきましょう。

仕事と育児の両立に関する雇用環境の改善にどの程度の期間を要するのかも併せて考えていき、「計画期間」と「目標」を決めます。

たとえば、「令和○年までに育児休業の取得率を全体で○%とする」「男性の育児休業取得率を2年間で10%アップする」などとします。

策定した行動計画は、策定日から3ヶ月以内に従業員および一般に公表します。

一般向けには厚生労働省が運営するWEBサイト「両立支援のひろば」や県の広報誌、自社ホームページへの掲載を行い、従業員に対しては企業や事業所内の見やすい場所に掲示したり、電子メールやイントラネットでの掲載・周知を行います。

行動計画の提出・実施

策定済の行動計画は3ヶ月以内に「一般事業主行動計画策定・変更届(様式第一号)」を都道府県労働局雇用環境均等部(室)に郵送もしくは持参、電子申請のいずれかで届け出ましょう。

届け出を行った後は、計画スケジュールにしたがって目標達成に向けての対策を実施します。以下に紹介する「モデル行動計画」は、行動計画実施にあたって参考となるモデルケースです。

参考:厚生労働省「一般事業主行動計画の策定・届出等について モデル行動計画

申請・認定

こうして行動計画を実施し、期間を終えた後は都道府県労働局へ認定申請を行います。

基準を満たしていると判断されれば、「子育てサポート企業」に認定され、くるみんマークが付与されます。

なお、プラチナくるみん認定の取得は、くるみん認定を受けた後に再度行動計画を策定し申請する流れになります。

認定制度の内容を把握して企業活動に活用しよう

少子化への取り組みや従業員のワークライフバランスが注目されている現代において、事業主の子育て支援は「企業の社会的責任」を果たす意味でもたいへん注目されています。

くるみん認定、プラチナくるみん認定の取得は企業の採用活動の一助となるだけではなく、取引先や顧客、就職希望者、社会からのイメージアップや、社員の企業内における働きやすさに繋がることでしょう。