70歳就業を努力義務とする高年齢者雇用安定法改正とは?

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日本の労働環境は、少子高齢化の進行により労働力不足が進んでいます。

厚生労働省の発表によると平成30年平均の有効求人倍率は1.61倍となり、平成29年平均の1.50倍を大きく上回りました。

少子高齢化が進行することが確実な現状では、若年層以外の労働力を確保することで人手不足を解消することが求められています。

そこでポイントになるのが高齢者の雇用です。

子ども達が労働市場に出るまでには20年近い時間がかかることから、逼迫する労働力不足を解決するためには高齢者を活用することが重要であると認識されてきました

そこで、今回の記事では改定が検討されている高年齢者雇用安定法の概要や、70歳就業を努力義務とする高年齢者雇用安定法の改正のポイントについてについてご紹介していきます。

厚生労働省「一般職業紹介状況(平成30年12月分及び平成30年分)について」

総務省統計局「高齢者の人口」

70歳就業を努力義務とする高年齢者雇用安定法改正とは?の要約

3行要約
  • 少子高齢化の進行と生産年齢人口の減少
  • 高齢者雇用安定法によって少子高齢化社会に対応
  • 高齢者雇用安定法改正によって企業の対応が義務化

高齢者雇用安定法について

高齢者雇用安定法について

  • 少子高齢化社会の現状
  • 高齢者雇用安定法とは?
  • 高齢者雇用安定法が制定された経緯
  • 企業に課せられた「高年齢者雇用確保措置」とは

少子高齢化社会の現状

我が国は少子高齢化社会と言われて久しいですが、内閣府が発行する「令和元年版高齢社会白書」によると高齢化率は28.1%を記録し、令和12年(2030年)には高齢化率が31.2%、令和47年(2065)年には人口の38.4%が65歳以上という歴史上類を見ない高齢社会を迎えます。

世界的な基準で見てみると、WHOの定義では人口に占める高齢者の割合が7%を超えた状態が「高齢化社会」と呼ばれます。14%を超えると「高齢社会」、21%を超えると「超高齢社会」と呼ばれるようになります。

高齢化率28.4%の日本は既に「超高齢社会」であり、今後も世界最高の高齢化率のまま進んでいくことが確実です。

世界の高齢化率は2015年時点でアメリカが14.6%、イギリスが18.1%、ドイツが21.1%で、2015年当時の日本の高齢化率が26.6%でした。

日本の高齢化率は先進国の中でも際立っていますが、新興国と比較するとその差はますます広がります。

例えばシンガポールの高齢化率は11.7%、中国は9.7%、インドに至っては5.6%と、約5倍の差があります。

しかし、日本が抱える真の問題は高齢化率が高いことではありません。最も深刻な問題は、少子化によって社会を支える人材が減っていることです。

社会の中では「支えられる側」であるとされている65歳以上の高年齢階層人口と、「支える側」とされている15〜54歳の現役年齢階層人口の比率は、1950年の1:12(1人の高齢者を12人の現役が支える)から1990年には1:5.8まで低下。2000年に1:3.9を下回ると2018年には2.1まで低下しています。

つまり、1人の高齢者を2人の現役世代で支えることを求められているのです。

過去に比べて現役世代の負担が重くなりすぎていることが大きな問題となっています。

現役世代、特に若手への負担が大きすぎると子供を産み育てる余裕がなくなり、今以上に少子化が進行していくでしょう。

この状況を変えるためにも、特に「前期高齢者」と呼ばれる65〜74歳の高齢者が社会の担い手として活躍することが求められています。

既に政府によって高齢者雇用安定法の改正が閣議決定されており、国会で成立すると2021年からは定年延長によって高齢者が活躍できる環境が整備高齢者雇用安定法の改正される見込みです。

内閣府「令和元年版高齢社会白書(全体版)」

日本経済新聞「70歳就業機会確保、企業の努力義務 改正法案を閣議決定」

高齢者雇用安定法とは?

高齢者雇用安定法は正式名称を「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」といい、57条の法律によって構成されています。

高齢者雇用安定法の目的

第一条 この法律は、定年の引上げ、継続雇用制度の導入等による高年齢者の安定した雇用の確保の促進、高年齢者等の再就職の促進、定年退職者その他の高年齢退職者に対する就業の機会の確保等の措置を総合的に講じ、もつて高年齢者等の職業の安定その他福祉の増進を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的とする
引用:高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

法律上では55歳以上を「高年齢者」と定義しています。

条文の中には事業主による高年齢者等の再就職の援助等(第15条〜21条)や定年退職者に対する就業機会の確保(第36条)、高齢者の就労機関であるシルバー人材センターの設置について定められています。

この法律のポイントは、定年の年齢について定義されていることです。

高齢者雇用安定法が改正されて定年の年齢が変更になると、企業はそれに従わなければならないため、社会的に影響の大きい法律の一つといえます。

高齢者雇用安定法が制定された経緯

高齢者雇用安定法は1971年に制定された「中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法」を前身としています。

1970年代の高齢化率は今の1/4である7.1%と非常に低い水準でしたが、このことが逆に企業が若年層のみを雇用する状況を作り出したため、中高年齢者の就労環境を確保するためにこの法律が制定されました。

「中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法」が制定された当初は職種ごとに45歳以上の中高年齢者の雇用率を定めることで高齢者の雇用を確保しました。

しかし、企業は40代の雇用を行うことで雇用率をクリアし、高年齢者の雇用確保には繋がりませんでした。

そこで1976年の法改正で全ての企業に対して55歳以上の高年齢者を従業員数の6%以上雇用することが定められ、1986年に「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下:高年法)」に改称されました。

高年法では、これまで労働慣行として多くの企業が独自に定めていた「55歳定年」を否定します。

法律では初めて60歳定年を企業の努力義務として定め、将来的な高齢化社会を見据えて定年制度を基軸に据えた法政策が展開されるようになりました。

同時に、高齢者を対象とした再就職支援やシルバー人材センターの設置について規定されるなど、今日に至る高齢者向けの雇用政策の土台を作っていきました。

1990年には高年法改正により60歳定年を努力義務としつつも、定年後65歳まで再雇用を行うことも努力義務として制定されました。

そして1994年の高年法改正で60歳未満の定年制度の禁止されるに至り、国によって定年が定義されることとなりました。

高齢化の進行とともに定年を延長する動きは続き、2004年の改正では65歳までの再雇用を努力義務としつつ、「定年の引き上げ」「継続雇用制度の導入」「定年制の廃止」のいずれかを対応を講じること定め、現行法でも維持されている「高年齢者雇用確保措置」の枠組みが完成しました。

これにより2006年から定年が65歳に引き上げられ、定年制のある企業では雇用継続制度が導入されて現在に至っています。

独立行政法人労働政策研究・研修機構「高年齢者雇用の法政策ー歴史と展望」

企業に課せられた「高年齢者雇用確保措置」とは

高齢者の雇用を確保するために、企業には「高年齢者雇用確保措置」を講じることが、2004年の高年齢者雇用安定法で定められました。

前章でご紹介した通り、この措置は「定年の引き上げ」「継続雇用制度の導入」「定年制の廃止」のいずれかを実現することを義務化しています。

しかし、2006年の段階では継続雇用制度を対象を限定することができました。

そのため、企業によっては対象者を絞ることでこれまでの制度を維持し、多くの離職者を生む結果となりました。

この状況を受け、2012年の高年齢者雇用安定法改正では60歳で定年を迎えた社員のうち、希望者全員を最長で65歳まで雇用することを義務付けました。

これにより、企業側は「再雇用制度」「勤務延長制度」のいずれかの制度を導入することを迫られたのです。

再雇用制度とは、雇用していた従業員を一度退職させてから、再び雇用する制度です。

ポイントは「退職時に退職金を支払う」ことと、「再雇用の際に雇用形態を変更できる」点でした。

再雇用制度は、正社員として雇用していた従業員を嘱託社員や契約社員として再雇用できるので、賃金の抑制に繋がることから大半の企業が導入しています。

一方、勤務延長制度は、定年に達した場合でもそのまま雇用を続ける制度です。雇用形態が変わらないので、従業員の観点からすると良い制度ですが、導入している企業は多くありません。

厚生労働省「平成30年「高年齢者の雇用状況」集計結果」

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「高齢者の雇用状況」

定年が70歳に延長?高齢者雇用安定法改正のポイントは?

定年が70歳に延長?高齢者雇用安定法改正のポイントは?

  • 定年延長により労働人口が増加
  • 意欲ある高齢者の活躍の場を確保
  • 継続雇用措置や定年延長による企業への影響は?

これまで段階的に定年が延長されてきた高齢者雇用安定法ですが、政府によってさらなる定年延長が検討され、2020年2月には閣議決定されました。

この章では2020年の通常国会での成立を目指している高齢者雇用安定法改正のポイントをご紹介していきます。

定年延長により労働人口が増加

2020年に予定されている高年齢者雇用安定法の改正では、定年が65歳に引き上げられ、同時に「70歳までの就業確保措置」が課せられます

これまで60歳定年だった定年が65歳まで延長し、65歳から70歳までの希望する労働者が就業することによって労働人口を増加させるのが今回の改正のポイントです。

「令和元年版高齢社会白書(全体版)」によると、2018年の生産年齢人口(15歳〜64歳)は7,596万人ですが、2029年には6,951万人、2065年には4,529万人まで減少すると予想されています。

その一方で65歳〜74歳の人口は2016年の1,768万人でピークを迎え、2028年まで減少傾向、その後再び増加して2041年にはの1,715万人に至った後、減少するものの、大幅な変動はなくほぼ横ばいと予想されています。

「前期高齢者」と呼ばれるこの世代が、定年延長することで労働力となります。政府が定年延長を目指すのは当然の選択といえるでしょう。

内閣府「令和元年版高齢社会白書(全体版)」

意欲ある高齢者の活躍の場を確保

内閣府の「令和元年版高齢社会白書(全体版)」によると「働けるうちはいつまでも働きたい」と考える60歳以上の割合は約4割に達します。

高齢者の就労理由の多くは「生きがい・社会参加」で、仕事を通して社会と繋がることで収入だけでなく生きがいや人との関わりを持つことを希望しています。

平均寿命と健康寿命が長くなっている昨今、このように考える高齢者は今後も増えていくでしょう。

このように意欲ある高齢者の活躍の場を確保することも、高齢者雇用安定法の目的の一つと言えます。

継続雇用措置や定年延長による企業への影響は?

高齢者雇用安定法の改正によって行われる継続雇用措置や定年延長がどんな影響を企業に与えるのでしょうか。

現実的には、プラス面とマイナス面の両方の影響があるでしょう。具体的に見ていきます。

高齢者雇用安定法の改正のメリット
  • 経験豊富な人材を雇用できる
  • 若手にスキルやノウハウを伝えられる

例えば設計職のように高齢でも肉体的な負担が少なく経験を活かせる職場であれば、高齢者であることのデメリットよりもメリットの方が大きくなります。

また、資格が必要な職種であれば資格を持っているだけで重宝されるので、このような職場であれば企業に対して良い影響を与えることは間違いありません。

高齢者雇用安定法の改正のデメリット
  • 人件費が増加してしまうことで他の世代に影響を与える
  • ポスト占有で若手の成長機会を奪い可能性

特に人件費が増加することで若手や中堅社員の昇給や賞与が見送られてしまうと次世代を担う若手のやる気を削いでしまい、離職につながってしまう可能性があります。

また、いつまでもポストを占有することで若手の成長機会を奪ってしまう可能性があります。

高齢者・若手社員双方のモチベーションが下がる可能性があるのもデメリットの一つです。

高齢者は「給与が下がる」「役職に就けなくなる」などの理由でモチベーションが下がる可能性があります。

また、若手は「マネジメントが難しい」「高齢者の賃金や仕事内容に納得出来ない」という理由でモチベーションが下がる可能性があります。

継続雇用措置や定年延長は良くも悪くも企業に影響を与える可能性があるので、高齢者を活用する際にはマネジメントに注意する必要があるでしょう。

厚生労働省「高齢者の雇用・就業機会の確保に関する主な検討課題と対応イメージ」

高年齢者雇用安定法改正で新たに企業に課せられる7つの義務・努力義務

高年齢者雇用安定法改正で新たに企業に課せられる7つの義務・努力義務

  • 定年延長
  • 定年廃止
  • 再雇用制度の導入
  • 他企業への再就職支援
  • フリーランスで働くための資金提供
  • 起業支援
  • NPO活動などへの資金提供

政府は2020年2月に高年齢者雇用安定法改正案を閣議決定しました。

今後、国会で成立すると2021年から65歳定年・70歳就業が実現します。この法改正で新たに企業に課される7つの義務・努力義務をご紹介していきます。

定年延長・定年廃止・再雇用制度の導入

7つの義務・努力義務のうち、最初の3点は現行法でも実施されている「高年齢者雇用確保措置」と同じく「定年延長」「定年廃止」「継続雇用制度の導入」です。

定年は60歳から65歳に引き上げられ、努力義務としての定年は65歳から70歳まで引き上げられました

継続雇用制度には、年齢により対象者を限定できる「経過措置」があります。

経過措置の対象年齢は3年ごとに1歳ずつ引き上げられていますが、2025年3月31日にはこの経過措置が終了します。

そのため2025年4月1日から全企業に「65歳までの雇用」が義務化され流ようになります。

他企業への再就職支援

高齢者の雇用が難しい場合には、他企業への再就職支援が努力義務として課される見込みです。

具体的には、「継続雇用」の範囲を自社だけでなく、グループ会社(特殊関係事業主)にまで拡大しようという制度です。

この場合は、定年まで雇用した企業とグループ会社が契約を結ぶことでグループ会社での雇用を自社での雇用と同様に扱うことができます。

特に大手企業の場合は高齢者採用に特化したグループ会社を作り、その会社に高齢者が遂行できる業務を発注することで雇用の創出と法令遵守を両立することが考えられます。

フリーランスで働くための資金提供

雇用契約が終了した高齢者がフリーランスとして働き続けるための資金提供を雇用元が行うことも検討されています。

フリーランスとは、会社や組織に所属せず仕事に応じて契約する個人事業主を指しています。

事業主は高齢者雇用するのではなく、資金提供や業務委託契約など働く機会を提供することで高齢者の就労を支援していきます。

高齢者は体調やスケジュールに合わせて柔軟に働くことができ、事業主にとっては雇用することで発生する人的トラブルを防ぐことができるので、双方にメリットがある方法だと考えられています。

起業支援

高齢者の起業を支援することで、高年齢者雇用安定法の努力義務を果たすという方法もあります。

近年、高齢者の起業がブームとなっており、中小企業庁の「2019年版小規模企業白書」によると2018年の年齢階層別の自営業主の人数は70歳以上が90万人で最も多い人数を占め、65歳〜69歳が62万人と2番目に位置しています。

このような高齢者の起業を事業主が支援することで、高齢者に活躍の機会を提供することも「70歳までの就業確保措置」の一つといえるでしょう。
国や自治体は高齢者の起業支援を行なっており、例えば日本政策金融公庫であれば最高7200万円まで特別待遇の利率で融資を多なっています。
政府も今回の法律改正を機に、企業が高齢者の起業支援に乗り出すことを期待しているのでしょう。

中小企業庁「2019年版小規模企業白書」

NPO活動などへの資金提供

「70歳までの就業確保措置」による努力義務の最後の一つがNPOや社会貢献活動への資金提供です。

定年後に社会貢献活動を希望する高齢者に対して資金提供によって活動を支援することが可能となります。

事業主がNPOに資金提供することで、法律遵守しつつ企業イメージのアップやCSRに繋げることができます。

これまでは大手企業を中心にCSRが推進されてきましたが、今後は高齢者など多様な人材が活躍できる社会づくりを中小企業も含めた全ての企業が支援することで、誰もが活躍できる社会づくりが推進されていくでしょう。

経済産業省「生涯現役社会に向けた雇用制度改革について」

高齢者雇用の今後の展望

笑うシニア
高齢化の進行によって65歳位以上の高齢者が人口に占める割合は28.4%と、約3人に1人を占めています。

労働力不足を解消するためには高齢者を活用することが社会的に大きなポイントであるという見解によって、高年齢者雇用安定法の改正が決定しました。

企業にとっては労働者不足を解消する機会であると同時に、さらなる多様な働き方を推進するための挑戦を迫られる時期に差し掛かっています。

高齢者の活用については、個人によって健康状態の差が大きくなるため、今以上に一人一人へのきめ細やかな対応が求められます。

しかし、高齢者が企業で活躍できる社会は誰にとっても活躍しやすい社会であるといえます。

企業にとっては働き方改革の大いなるチャンスが訪れていると考え、前向きに取り組んでいきましょう。