「ひたすら復習」はムダ!脳の強みを生かす勉強法|情報整理の達人術

資格取得やスキルアップなど、社会人になっても勉強からは逃れられません。
ここでは、脳の仕組みやよく知られる心理学の知識を活かして効率よく情報をインプットしていく方法を解説しています。

“細切れの情報”は頭に入りにくい

たとえば、こんなことはないでしょうか?

  • ひたすらランダムに英単語を覚える
  • 脈絡のない数字の並びをそのまま覚える
  • まったく知らない分野の専門用語の意味を理解する

こういったことが苦痛で仕方がない。

苦痛なのは当然です。

なぜなら、関連性のないものを無理やりに詰め込もうとしているからです。

こうした「断片的な情報」を頭に入れようとしても、すぐに容量がいっぱいになり、受け付けてくれません。

実は、脳の情報の出入りを見張る門番役の「海馬」がそれを許してくれないからです。

海馬は、限られた記憶容量を効率的に活用するため、断片的な情報はどんどん捨てていきます。

記憶の限界を決めるマジカル・ナンバー

米国の心理学者ジョージ・ミラーは短期記憶に関する研究で、1度聞いただけで直後に再生できる記憶容量はどの程度かを調べました。

その結果、人間の脳は数字や人の名前などの断片的情報を、1度に5〜9(7±2)個しか覚えられないということがわかったのです。

この限界となる数は、「マジカルナンバー7±2」として知られています。

ジョージ・ミラーは「The Magical number seven, plus or minus two: some limits on our capacity for processing information」という論文の中で、一度聞いただけで直後に再生するような場合、日常的なことを対象にする限り記憶容量は7個前後になるということを示した。

この7個というのは情報量ではなく意味を持った「かたまり(チャンク)」の数のことで、数字のような情報量的に小さなものも、人の名前のように情報量的に大きな物も同じ程度、7個(個人差により±2の変動がある)しか覚えられないということを発表した。

引用:Wikipedia|ジョージ・ミラー (心理学者)

そして、これを超えた情報はどんどん捨てられてしまうのです。

9個を超えるランダムな数字と言えば、ちょうど電話番号が当てはまりますね。

この結果からも、一度に記憶できるランダムな情報の容量はきわめて少ないことがわかります。

だから体にムチ打って無理やり覚えようとしても、ムダ。

しかも、この状態で新しい記憶を詰め込もうとすると、古い記憶はどんどん溢れ出てしまいます。
こんな状況では勉強がはかどるはずはありません。

記憶の仕組み
断片的な情報はいくら頑張っても、海馬という門番が入れてくれません。
さらに、無理やり入れようとすれば、元からあった情報がこぼれてしまうのです。これでは勉強がはかどるはずはありません。

それでは、私たちはどのように情報を頭に入れればよいのか。
どうすれば、忘れにくい記憶をつくることができるのか。

これまでのやり方は「ひたすら復習」でした。

”忘れるスピード”を遅らせる法

ドイツの心理学者エビングハウスは、一度覚えたものは時間経過とともに忘れていく現象を定量的に実験して曲線に示しました。

ヘルマン・エビングハウス(Hermann Ebbinghaus、1850年1月24日 – 1909年2月26日)は、記憶に関する実験的研究の先駆者で、忘却曲線を発見したことで知られるドイツの心理学者。また、初めて学習曲線に言及した人物で、反復学習の分散効果(英語版)を発見した。新カント派の哲学者ユリウス・エビングハウスの父親。
引用:Wikipedia|ヘルマン・エビングハウス

かの有名な「エビングハウスの忘却曲線」と呼ばれるものです。

エビングハウスの忘却曲線

エビングハウスの忘却曲線

これによれば、人は情報を記憶した後、4時間の間に半分近く忘れ、時間とともに少しずつ忘れてしまいます。

よほど人間の脳というのは忘れっぽいのでしょうか。すごいスピードでの忘却です。

このエビングハウスの記憶に関する実験は、「子音・母音・子音」から成り立つ無意味な音節(例:rit, pek, tasなど)の記憶と再生率を調べたものでした。

しかし、間隔を置いてもう1度インプットすると、記憶の定着を確実なものにできます。

なぜなら、2度目、3度目と回を重ねると忘却曲線がなだらかになっていくからです。
「復習が大事」と言われる所以ですね。

具体的には、1度目の復習を翌日、2度目の復習を1週間後、3度目は2週間後に行います。
さらに、最後の復習を1カ月後にやるともっとも効果的だとされています。

注意しなければならないのは、復習する前に無理やりほかの情報を新たにインプットしないことです。

異なる情報が入ると、その前に記憶されたものはさらに忘却率が高くなり、記憶効率が悪くなります。

復習効果を得るには、あくまで同じ情報を間隔を置いて何度もインプットするのが重要なのです。

しかし、こんな無意味な音節を人生の中で覚える必然性が実際にあるかどうかは疑問です。

なぜなら、語学だって、経済システムだって、すべての価値ある情報には「意味」というものが存在するからです。
まったく無関係に独立して存在する情報など世の中にありません。

そう考えたときに、はたして復習だけが万能な記憶強化の方法と言えるでしょうか?

脳の強みを生かす「ちょっとしたコツ」

断片的な情報はすぐに忘れてしまう一方で、一度きりであっても印象的なエピソードとともに経験したことは、映画の1シーンのように決して忘れることはありません。

また、過去に見たことのある映画の1シーンをテレビで見れば、瞬時にどの映画なのか、どんなストーリーだったのかを思い出すことができます。

映像とセットになった記憶力は凄まじい処理能力があるようです。

1973年にカナダのL.スタンディング教授が記憶力についての実験を行いました。

被験者にあらかじめ合計1000種類の具体的な物体が描かれた画像を5秒おきに見せます。

そして次に、すでに見せられた画像1枚と、まったく初めて見る画像1枚を被験者に2枚ずつ並べて見せます。
そのうちどちらが前に見たことがあるのかを言い当てさせます。

その結果、被験者は平均で1000枚中、なんと992枚の画像を見事に当てることができたのです!
(同様の実験を絵の代わりに単語で行なったところ、結果は70%でした)

99.2%の正解率というのは大変なことです。

記憶映像とのマッチングはコンピューターにやらせれば膨大な処理量となります。

それをいとも簡単にやってのけることができるのが人間の脳の素晴らしさ。

映像、エピソード、ストーリーといった人間のもっとも得意とするやり方で、記憶と再生を実現できればいいのです。

脳の“ 潜在能力” に気づこう!

なぜ、人間は映像に関してそれほど驚異的な能力を発揮できるのでしょうか?

映像と記憶する
特に、雑多な映像や音声情報の中から意味のある「つながり」を見つけ出す「パターン認識」という処理は、コンピューターにとっては非常に難しい処理ですが、人間の脳にとっては朝メシ前です。

パターン認識を活かすと、新しい問題に出くわしても、過去の同じような解法を参考に解くことができます。

こうした人間の脳の特性を、ぜひ勉強法に活かしたいものです。

効率よく情報を記憶していくためのPOINT!

断片的な情報は、いくら詰め込んでも脳の門番に阻止されます。
そのため、根気の必要な反復学習は、大人には合いません。
映像の認識率は驚異の99.2%であることを利用しましょう。

参考図書